「褒めてるつもり」ではダメ

日本では「評価に対する考え方」と「長い経済的な停滞」という2つの大きな要因が、仕事において無意識にネガティブなフィードバックが多くなりやすい状況をもたらしています。超少子高齢化の現代においては、この環境を変えなければ希少な人材を維持したり、個人の意欲を高めて労働生産性を上げて他社との競争に打ち勝ったりすることはできません。

ネガティブなフィードバックが蔓延し、「進んで新しい仕事を実施してリスクを取ることが損である」という社内文化を変えることは難しくても、自分の行動を変えていくことはできます。

まず個人で明日からすぐにできる方法としては、「ネガティブなフィードバックの割合を減らすこと」が有効です。部署やチームで仕事をする際は部下やメンバー個人個人のアウトプットの方向性や品質が高いものである必要があります。そこで、「ダメ出し」という形でネガティブなフィードバックをすることは避けられませんが、その際に相手から見てネガティブな評価ばかりにならないようにすることがポイントです。

たとえば、提出されたアウトプットに対して、「ここがすごく良かった」と相手の努力や創意工夫を認めたうえで、「この部分は修正が必要だから直してほしい」や「この部分は方向性が違うからこう変更してほしい」と、ポジティブな評価とネガティブな評価をセットにして伝えるようにするのです。

画像はイメージです(写真/Shutterstock)
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完璧主義者のマネージャーはしばしば「褒めてるつもり」や「態度で示しているつもり」と考えていることがありますが、明確に言葉にしなければ相手に伝わりません。必ずポジティブな表現とセットで伝えるようにするとフィードバックのバランスを保ちやすくなります。

文/橋本将功

『人が壊れるマネジメント プロジェクトを始める前に知っておきたいアンチパターン 50』(ソシム)
橋本将功
人が壊れるマネジメント プロジェクトを始める前に知っておきたいアンチパターン 50
2025/3/31
2,200円(税込)
264ページ
ISBN: 978-4802615051

知っていれば避けられる!プロジェクト現場のマネジメント「アンチパターン」集

プロジェクトマネージャー(PM)一筋24年!500件以上のプロジェクトを経験してきた著者が、多くの組織・プロジェクトで見られる「人が壊れるマネジメント」の原因を体系化し、その回避法を具体的にご紹介します。

「目標の不明確さで壊れる」
「経営陣の無理解で壊れる」
「意思決定過程への非参加で壊れる」
「マイクロマネジメントで壊れる」
「組織文化とのミスマッチで壊れる」
「実行したタスクがキャンセルされて壊れる」

などなど、人が壊れやすい50のアンチパターンを紹介。
再現性の高い「正しいマネジメントの方法」をセットでお伝えします。

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