無人兵器で中国に遅れをとったアメリカ 

一方でアメリカの無人機開発状況はどうだろうか。米国は中国と同じく全翼機型ステルス無人機X-47「ペガサス」を2016年まで開発していた。だが、技術的問題と開発費や機体のコスト高によってこの計画を放棄し、現在では全翼機型の開発は行っていない。

その後、アメリカでは無人機の運用方法が二転三転し、現在では有人の戦闘機と随伴する半自律型のCCA(共同交戦航空機)プログラムが主流となった。言わば“無人の僚機”の開発を急いだ。

しかし、一朝一夕には開発が進まない。CCAの機体としてはようやく今年の8月にジェネラル・アトミクスの試作段階のYFQ-42Aが初飛行したばかりだ。もう1機のアンドゥリルのYFQ-44Aとともに年内の飛行テストが間に合うかどうかの段階で、2029年までの配備を目指し始めたところだ。

有人戦闘機に随伴するCCAならば、中国は前述の軍事パレードでもステルス戦闘機J-20とチーミングが可能なFH-97(飛鴻-97)系列や、他に少なくとも3種類の無人戦闘機を登場させているため、客観的にみてもアメリカより一歩先を進んでいるのではないか。

「抗日戦勝80周年」軍事パレード(9月3日) に登場したFH-97系列の新型ステルス・ドローン(【全程直播】纪念中国人民抗日战争暨世界反法西斯战争胜利80周年大会」)
「抗日戦勝80周年」軍事パレード(9月3日) に登場したFH-97系列の新型ステルス・ドローン(【全程直播】纪念中国人民抗日战争暨世界反法西斯战争胜利80周年大会」)

無人兵器に詳しい航空評論家の嶋田久典氏はこう指摘する。

「有人戦闘機とネットワークで繋がって飛行するCCAに対し、独立して飛行するドローンはさらに技術が要求されます。たとえて言うならば、狩りで主人となる人間が猟犬を鎖でつないでコントロールするか、猟犬から鎖を解放して野に放つような違いがある。

そもそも中国の無人機開発は倫理無用の開発スピードと中東からの実戦データのフィードバック、先進の暗号通信&電子戦能力で、大から小のドローンまで世界の最先端をいっているとはかねがね言われていました。

9月3日の軍事パレードではそれが一気に表面化した感じでアメリカに比べても中国が一歩、二歩リードしているでしょう。

同時に閲兵式の意味合いがあったのか、中国は空中戦力だけではなく陸海それぞれにも多種の無人機を繰り出しました。地上版は犬型ロボットから露宇戦争でも見られた小型6輪車などが登場、海はアメリカとの対決で穴となっている洋上監視能力を強化する無人水上艇、潜水艇を繰り出しています。

まさにアメリカが中国の台湾侵略を阻止するためにつくった『ヘルスケープ(地獄絵図)構想』の中国・無人兵器版ですね」