初の大型装備品輸出
オーストラリア海軍が次期汎用フリゲートとして、三菱重工業が提案した護衛艦「もがみ能力向上型」を採用すると今月発表した。
日本が2015年に売り込みをかけ、安倍政権下で潜水艦「そうりゅう」が大本命と言われながらも、翌年、同国海軍に採用されたのはフランス製だった(航続距離などの作戦行動の点で最終的には米英の原潜に変更)。
その時の“商機”を逸してから約10年。日本の大型装備品が輸出されるのは初めてで、歴史的なマイルストーンである。
フリゲートとは、帆船時代からあった小型の艦のカテゴリー。第2次世界大戦までにはこのクラスがなくなり、戦後、英国で駆逐艦より小型で対潜能力などを持ち、航続距離がある多用途艦として復活した(我が国では戦前からこのような区分はなく、「駆逐艦」「巡洋艦」「空母」のように日本語化されないまま、戦後の自衛隊ではすべての艦艇が「護衛艦」と呼称するようになったため聞き慣れないジャンルだ)。
しかるに最近の世界の潮流ではフリゲートは大型化しており、駆逐艦どころか巡洋艦クラスのものもある。今回もライバル艦はドイツ、韓国、スペインなどが提案したフリゲートで、最後までドイツ艦と競り合った末、日本が勝利した。
軍事評論家の毒島刀也氏は次のように解説する。
「ドイツMEKO A-200、スペインAlfa3000、韓国・大邱級バッチII/IIIが候補に上がっていました。けれどもスペインと韓国はオーストラリアの要求(作戦期間、サポート)に合わないから最初に脱落。
前の艦の経験があるからドイツのサポートは安心できるものの、その代わり昨今のヨーロッパ造船では納期&品質が怪しいし、欧州製コンポーネントで組み上げた艦だとアメリカ製ミサイルのインテグレート(組み込み)に時間が掛かるのはわかっています。
その点、日本製は建造費は高いが、維持費は安い。装備、運用がアメリカ軍と親和性が高いから装備の変更が少ないし、また最初の3隻は日本で製造し、納期を守るということから採用に至ったわけです」
今回の計画では10年間で100億オーストラリアドル(日本円で約9600億円)をかけて11隻が建造される予定。前述のように最初の3番艦までは日本国内で建造され、1番艦は2029年に納入され30年に運用を開始する。
コンロイ豪国防産業相は「コスト、性能、納期の順守の面で『もがみ』型が明らかな勝者だった」と述べ、今後の両国関係のさらなる発展を願っている。