オカダの退団
社長就任を依頼された段階で、僕はオカダの退団を知らなかった。
もちろん噂レベルでは聞いていたけど、確信はなかった。オカダに関してはCHAOSでユニットだった中邑の影響をやはり強く受けていたから、日本という枠に収まらない考えを持っていても不思議ではなかったし、その意味でも退団自体に驚きはなかった。もちろんショックや寂しさはあったけれど。
ただファンの方々の反応を見ても、これからオカダが海外でどんな活躍をするのか楽しみにしているポジティブな反応も見られたし、そういう形で送り出すこともできた。ただ社長としてはいろんな方に心配された。当然だろう、社長就任早々の逆風だ。
しかもオカダだけじゃない。
ウィル・オスプレイも新日本プロレスを退団し、前年はジェイ・ホワイトも退団している。
でも僕に不安はなかった。なぜなら僕には逆風に対する免疫があるからだ。
2000年代、新日本プロレスから主力選手が大量退団したことがあった。
当時の自分、そして共にその状況に立ち向かった中邑もまだ実力も団体を背負うには不十分で、たくさんチャンスをもらったけど、なかなか試合内容と知名度が伴わず、集客には苦労した。
でも結果的に世代交代が進んだ。その意味では、逆風も結果的にプラスとなったとも言える。
中邑が新日本を退団したときもそうだった。中邑の退団直後に内藤やケニー・オメガが一気に出てきて、新日本は過去最高売上高を出すまでに活性化した。
その意味では、今回も世代交代ができたとポジティブに考えたい。
実際、オカダ、ジェイ、オスプレイの空いたポストを狙い、辻や海野、上村優也や成田蓮と次々と若い選手が台頭している。彼らがそのポストを奪い合うのは間違いない。中でも辻はNEW JAPAN CUP 2024で勝利しすぐに結果を出してみせた。
僕ももちろんそのポストを狙っているし、彼らに簡単に譲るつもりはない。
文/棚橋弘至