ダンプ松本のヒールっぷりは『極悪女王』以上
──『極悪女王』をご覧になった感想を教えてください。
ブル中野(以下同) 率直にいうと、もっとダンプ松本さんだけを追ったストーリーだと思っていました。
でも、当時人気を博したクラッシュギャルズ(長与千種&ライオネス飛鳥)の葛藤なども描いていて、それらが交錯していく仕立てになっていることに感心しました。
ダンプさんについては本当によく描写されていると感じました。彼女はプロレスへの取り組みは厳しいものの、もともとの性格はとてもまっすぐで優しい方です。その内面が強調されていたのがよかった。
……でも実は彼女の徹底したヒールっぷりは作品以上でした。
たとえばプライベートにおいても、悪役のイメージを損なわないように、近所の人が見ているところではファンからもらった色紙を投げ捨てるなど、嫌われる努力をとことんやった人です。
ダンプさんが本当は心優しい女性だということは、ご家族もあえて周囲に言わなかったのではないでしょうか。
──本作では、ダンプさんが自宅に落書きされたり、ファンレターが届いたと思ったら中にカミソリが入っていたりと、容赦ない描写がありますよね。ヒールを演じていると、実際にアンチから襲われる可能性もなくはないと思いますが、恐怖は感じませんでしたか?
作品に出てくるほとんどのことは現実にあったと思います。私たちヒールは入場すると石を投げられたりしました。
ダンプさんの頭を背後から殴って逃走する人もいる。で、私たちは後輩だから、ダンプさんから「あいつ、捕まえてこい」とか言われて(笑)。
逃したら我々が怒られますから、必死になって捕まえてきてダンプさんのところに差し出す。すると、ダンプさんがそいつをボコボコにしたりして(笑)。
ただ、そういう暴力も徐々になりを潜めて、後半は「ダンプさんの前で一発芸して笑わせろ」とかいってマイルドになっていきましたが。
ヒールも大変でしたが、おそらく入場時に不快な思いをするのはベビーフェイスも同じだったのではないかと思います。
入場のどさくさで胸や局部を触る客も結構いて、新人のときはそれをガードする役割を任されました。結果として、ノーガードになった新人がベタベタ触られるんですけどね。
当時、実際に不良みたいな人たちから日常的にカラまれていましたよ。もし不良に負けたら「弱い」と客にいわれるのは目に見えてるから、全員徹底的に懲らしめました。だから、試合以外でも追加で何試合もしていた感じです(笑)。