新日本プロレスの収入源

決算書を見ながら、新日本プロレスの収支に僕は改めて向き合っている。

アメリカの世界最大規模のプロレス団体であるWWEは、2023年にUFCと経営統合して企業価値は総額214億ドル……日本円にすると約3兆円を超える規模となっている。その売上高は2023年には17億ドルに達し、前年比47%増。

その内訳を見るとゲート収入は全収入の半分以下に過ぎない。会場にお越しいただくお客様のチケット代による収益を、僕たちはゲート収入と呼んでいるが、WWEにおいてはそれ以外のグッズ収入や映像収入が本当に大きいのだ。

一方、新日本プロレスの2023年度の売上は約53億円で、その大半をゲート収入が担っている。もちろんゲート収入自体はコロナ禍前の65%のレベルに留まっているから、まだまだ伸びる余地はあると思う。

でも僕はそれ以外の部分にもっと注力して、この比率を変えていかないといけない。

2023年12月23日、新日本プロレスの現役選手兼任と第11代社長に就任した棚橋弘至(本人SNSより)
2023年12月23日、新日本プロレスの現役選手兼任と第11代社長に就任した棚橋弘至(本人SNSより)
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年間に開催できる興行の数はいくら頑張っても限界があり、これを増やしすぎて過密日程となると怪我の問題などが出てきやすくなってしまう。だからこそ収入全体における柱を、ゲート収入だけでなく複数立てていきたい。

その柱になりうるのが映像配信サービス「NJPW WORLD」であり、アパレルであると考えている。

「NJPW WORLD」は2023年11月にリニューアルを行い、公式アプリを作成した。これから進めていきたいのは、海外の加入者でありファン層を増やすことだ。

もともとアメリカでの映像販売に関しては、ここ10年くらいさまざまな施策を取ってきている。例えばAXS TV Fightsなどに映像を販売してきたし、NJPW WORLD自体も、海外の方が加入者全体の約3〜4割ほどになってきた。

コロナ禍の時は大会数が減ってしまった関係で一時的に会員数は減少したけど、今は以前以上にアメリカでの興行も増えてきたことで、改めて新日本プロレスに注目が集まり始めた。

やはりその国をマーケットとして見てくれているかどうかをアメリカの人は明確に感じているように思う。この現象は日本国でも同様で、都市部でしか興行をしていなければ地方のファンの方々は新日本プロレスに対してやはり身近に感じにくくなり、離れていってしまうようだ。

もちろんそれ以外の要素、例えば海外の大物選手……クリス・ジェリコなどが参戦すると海外の会員数はグッと伸びてくる。だからアメリカ市場においてはさまざまな手を打っていく必要がある。

そしてもちろん、目指すべき海外はアメリカだけではない。欧州やアジア圏に対しても、これからの新日本プロレスは積極的に攻める方向に舵を切っている。

その上で鍵となってくるのは、英語実況であり海外への発信能力だ。たとえどんなに良い試合を行っても、見てもらえなければ、そして伝わらなければ意味がない。だから海外に向けた体制強化をこれからはより一層努めていくつもりだ。