「当時はビックリするくらいもらってたけど…」 

――イカ天に出たことでイロモノ扱いされることも多かったのでは?

その自覚は当然ありましたよ。だって石川さんと一緒にやってて、イロモノじゃないは無理があるでしょ(笑)。

――確かに(笑)。

まぁ、僕らメンバーはそれぞれコミカルなものが好きっていうのは共通してあったから、別に問題なかった。コミックソングを歌うわけじゃないけど、コミックソングもそれはそれでおもしろいなって思ってましたし。

――「カブキロックス」とか?

あれはコミックソングじゃないですね。安易な何かです(笑)。

――イロモノに見られながらも「たま」の演奏技術は非常に高かった。

それは勘違い。たまは4人全員がシンガーソングライターの集まりだから、歌の流れの中で息を合わせるのが上手かったってだけですよ。

ロックバンドの人たちはドラムとベースのリズムの上に上物(ギターやボーカルなど)を乗っけるから、そういう人たちから見れば、ちょっと特殊に映ったのかもしれないね。

ランニングシャツで奇声をあげるイメージの強い石川氏だが「リズム感がよかった。ただテンションが上がると走りだすから僕とベースのGさん(滝本晃司)の演奏で抑え込んでたね」
ランニングシャツで奇声をあげるイメージの強い石川氏だが「リズム感がよかった。ただテンションが上がると走りだすから僕とベースのGさん(滝本晃司)の演奏で抑え込んでたね」

――下世話な話ですが、人気者になってかなり儲かったんじゃないですか?

それ以前に比べたらビックリするくらいもらってたね。でも、当時同じ事務所に所属してたバンドも、どうやらみんな搾取されてたみたい。

――当時の事務所はPCMですよね。

そうそう。僕らみたいなバンドをいっぱい抱えて大当たりした事務所。儲かったお金で伊豆に温泉付きのでっかいスタジオを作ったりして。僕らもそんなにお金はいらなかったというか、最低限あればよかったから、別にトラブルになることもなかったけど。

お金は必要以上にあると、それに支配されちゃうからさ。

――含蓄のある言葉です。改めて「たま」時代を振り返って。

まぁ楽しかったですよ。たまがなければ、今こうしてのんびり歌って暮らせてませんから。

現在もソロやユニットで精力的にライブ活動を行っている。着用している自身モチーフの還暦記念Tシャツは知人のRoseLove氏が作成
現在もソロやユニットで精力的にライブ活動を行っている。着用している自身モチーフの還暦記念Tシャツは知人のRoseLove氏が作成
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――後編では知久さんの現在の活動とたま復活の可能性について聞きます。

後編に続く)

取材・文/武松佑季
撮影/二瓶彩