パンクシーンの最重鎮・HIKAGE
ザ・スタークラブのボーカリスト・HIKAGEは、無骨で漢気がありながらも、懐が深くてとても穏やかな人物だ。2023年8月29日におこなった今回のインタビューでも、淡々とした語り口で、飾らず、隠さず、時にネガティブな話も率直に語った。これも、HIKAGE流の“パンク”なのだと僕は理解した。そのひとつひとつの言葉が、重みをもって心に残る。
1977年の始動以来、ザ・スタークラブは一度たりとも止まることなく、音源を出し続け、ツアーを続けてきた。オリジナルアルバムは35枚、シングルを含めれば50枚以上。なぜそこまで続けられるのかと尋ねると、HIKAGEは「慣れ」「つくるのが好きだから」とあっさり答えるが、曲づくりには常に葛藤があると明かした。
「曲はいつも、つくり出してから後悔するんです。最初に自分の頭のなかにある時点で、ある意味、完成形だから。100点満点で、オリコンの1位が取れるレベルなんです(笑)。だけどそれを実際につくっていくと、どんどん点数が下がっていく。最初のイメージとずれてくることもあるし、技術的にできる範囲もあるからね。自分の歌もそうなんだけど、楽器は他人がやっているから、どうしても思い通りにはいかない。それで、リリースする時点では『出したくないな……』と思うほど後悔しています(笑)。
でも、だからまたできるんですよ。絶対に満足できないから。100点満点のまま完成しちゃったら、そこで終わりなのかもしれない」