「成長したい若者」の謎
成長したい若者は「実在」するのか。この問題は既にある程度答えが出ている。
まずは構築主義的な視座から「社会的にそう思われていること」と実態が乖離している可能性がある。率直に言えば、「成長をしたい」若者がメディアその他によって作られていると考えうる。バズり目的、浅い印象論、あるいは面白おかしく切り取られることで、ないものがあるように語られる。間違ってはいないし残念ながら一部は正しいだろう。
問題はそれ「だけ」で終わらない。核心は、存在しないものが作られることではなく、作られたものがなぜかリアリティをもって受容され社会に根付いていく点にある。メディアが勝手に作っていると冷笑しながら、なんとなく受容して楽しまれてもいるはずだ。
実際に転職は別に増加していないにもかかわらず当たり前のものとして「一般化」している。一抹の真実性を感じるからこそ、作られた言説は社会に根を張るのである。
また、離職と離職志向は違うことにも注意が必要だろう。嫌な職場だからといって実際に辞める人は多くはない。「成長したいと答える若者が実際に成長をしたがっているとは限らない」のだ。