「安定」の意味が変わった?
若者のキャリア観をめぐって、若者が「安定」を求めているという言説が最近よく聞かれる。大企業とベンチャーどちらに入りたいですか? と問うと大企業と答える割合が増えているらしい。マイナビの調査では「企業選択のポイント」は6年連続で1位が「安定している会社」になったとのことだ。
ところが、この安定の概念のとらえ方が変わったという。かつて「安定した会社」が良いとは、潰れない会社とか会社の業績の安定を指していた。公務員のような安定した職業、というフレーズにも表れている。翻って最近の若者が求める安定とは、会社の安定ではなく自身のキャリアの安定、つまり食いっぱぐれないことなのだという。
…? 一緒ちゃうの? フツーに考えたら、「安定した会社」、業績が良いとか福利厚生が良いとか離職が少ないとかそういう会社に入れたら、自分のキャリアも安定したと考えるべきだろう。
この理屈が通用しなくなっているらしい。その理由は、終身雇用制が解体され、転職が活発化し(より正確には活発化したような気がしており)、同じ会社で勤め上げるというキャリア観を人々が持たなくなっているからだ。
会社が教育訓練やOff-JTにかける費用は低調であり国際的に見ても低水準である。非正規労働者には教育訓練をしようとしない現実もある。
だから会社に依存するのでなく、「自分でキャリアを磨く」べく、成長だの成長実感だのを求める。これがこの手の話に共有されるストーリーだ。
上司や先輩からすれば、若者がそういう未知のことを言い出して怖いと感じる方もいるだろう。「成長」「やりがい」を叫ぶわりに何をしてほしいのかどうなりたいのかは曖昧で、離職やハラスメントのことも考えたらどうも怖い。