映画は戦争を知る手掛かりとしてすごく大きな役割を担う

──映画『長崎―閃光の影で―』は、原爆投下という悲劇を看護学生だった少女たちの視点で描いた物語です。

戦争で命を落とした方の痛みが一番大きいことは確かです。でも、残された人間たちが厳しい状況下でどう生きていくかということも、想像を絶する過酷さがあったと思います。

今回の映画に登場する3人の少女たちは、生きていることへの罪悪感だったり、救えなかった命に対しての悔やむ気持ちだったり、そういうものを全部引き受けて生きていかなければならない。とても大きなプレッシャーだったと思います。

(C) 2025「長崎―閃光の影で―」製作委員会
(C) 2025「長崎―閃光の影で―」製作委員会

──南さんが演じたのは、修道院で孤児たちの世話をする令子役。大きな母性を感じさせるキャラクターは、映画の中で一筋の光となります。

主人公のスミは母親を亡くした赤ん坊に対し、自分が看護学生としてもっと何かできたのではないかという気持ちを抱えて令子を訪ねてきます。

申し訳なさを感じ続けるよりも、しっかり生き続けること、そして悲劇を忘れないことを伝えたいと思い、大切に演じました。

(C) 2025「長崎―閃光の影で―」製作委員会
(C) 2025「長崎―閃光の影で―」製作委員会

──今年は戦後80年です。時間の経過とともに、当時のことを自分事として捉えることが難しくなっています。

そういう意味でも、映画は戦争を知る手掛かりとしてすごく大きな役割を担うと思っています。私が個人的に強く印象に残っている戦争映画は、メリル・ストリープの代表作である『ソフィーの選択』です。

アウシュビッツ収容所にいた主人公が、幼い娘と息子をガス室に連れていこうとする人物に向かって、「息子はやめて」と叫んでしまう。とっさに出てしまった一言を一生悔い続ける映画です。

もちろん私も当時のことは資料でしか知りません。でも、その瞬間の主人公の心情や罪の意識は、私も一緒に擬似体験することができました。『長崎―閃光の影で―』も、戦時下で青春時代を送る若い女性たちの葛藤を自分に置き換えて、擬似体験できる作品だと思います。