腸内環境を整えると脳にも良い影響が生まれる
睡眠と同じくらい、脳の活性化のために重要なのが「食事」です。
近年の研究で、特に注目されているのが、「脳腸相関」と呼ばれる腸と脳の関係について。腸の健康状態が、脳の働きや感情の安定に深く関わっていることが科学的にも明らかになっています。
「腸と脳がどうして関係あるの?」と不思議に思われた方もいるかもしれませんが、実は腸には消化器官としての役割だけでなく、「第二の脳」と呼ばれるほど複雑な神経ネットワーク(腸管神経系)が存在しています。その中で、腸と脳は常に情報交換を行っており、腸の状態が脳の感情や意思決定に影響を与えているのです。
たとえばストレスを感じるとお腹が痛くなる人が多いですが、これは、脳がストレス情報を腸に伝えるため。逆に、腸内環境が乱れていると、不安感や気分の落ち込みが引き起こされることもあります。実際に、腸から脳への情報伝達量は、脳から腸への伝達量よりも多いことが知られています。
つまり、脳の状態を改善するには、腸の状態を気にすることが、ひとつの近道だと言えるのです。
たとえば、僕の友人で哲学者の塩谷賢さんが、以前おもしろい事例を教えてくれたことがあります。当時の彼は時間論という非常に難解なテーマに取り組んでいたそうです。時間というものがどのような性質を持ち、人間の認識とどう関わっているのかという哲学的な問題に深く悩み抜いた末、なんと体調を崩す寸前まで追い詰められてしまったのだとか。
しかし、そんな彼の状況を大きく変えたのが「食事」でした。難問に向き合って頭を抱えていた彼が、京都で素晴らしく美味しい天ぷらを食べたところ、その深刻な悩みが一気に軽くなり、気持ちが落ち着いたとのこと。この事例は、食事が腸を通じて脳の働きに直接影響を与える良い例だと思います。
また、腸と脳の情報交換には、迷走神経という重要な神経経路が関係しています。腸が健康であれば、この経路を通じて脳に良質な情報が伝わり、脳が活性化される。反対に、腸内環境が悪化すると脳にネガティブな影響を与え、集中力や判断力が低下する可能性もあります。
腸のパフォーマンスを高めることは、脳の活性化やメンタルの安定にもつながっていきます。日常的にバランスの良い食事を心掛け、腸内環境を整えることで、腸の健康を意識した生活を送って、脳のパフォーマンスを最大限に引き出すことができるのです。