怪物vs.自立支援
ウクライナ戦争以後、食料価格高騰の波がアフリカ大陸を飲み込んだ。日を追うごとに右肩上がりに値段が上昇する穀物。
特に小麦の値上がりに対しては、ウガンダのヨウェリ・ムセベニ大統領が自らの演説で「(小麦の価格高騰によって)パンが食えないなら(ウガンダで自給できる)キャッサバを食え!」と国民に語りかけるほど、一般的で悲劇的な問題となっていた。
半乾燥地帯に属していて、年間を通じて一期作しかできないウガンダ・カラモジャでは、飢えの問題が恒常化している。そこにのしかかったインフレ。2022年を悪夢の年と住民が呼んだことにそれほどの驚きはない。それは悪夢の形をした、現実だった。
干ばつの影響も大きい。カラモジャでは気候変動の影響を受け、年々天候パターンが読めなくなっている。2021年を例にとると、雨季の到来に2ヶ月ほどの遅れがあった。結果的にこの年の雨季は短く、収穫はとてもひどかった。
そして翌年(2022年)は餓死者が出るほどの危機に直面した。私たちが活動を開始した地区では毎月100人以上が餓死していた。
「食べるものがなくて人が死ぬ」なんて、アフリカで生活していても普段から聞くような話では決してない。それは異常事態だ。
目の前にある危機に対して、多くの援助団体が競い合うように、緊急的な食料配布を実施した。緊急といっても、恒常化している食料不足に対して、食料配布さえも恒常化している。
もちろん日々奪われていく人の命を繫ぐためのアクションも必要だ。でも残念ながら、緊急支援は出血した傷口をふさぐための一時的な対症療法にしかならない。
深刻な「飢え」や「渇き」という危機の中にある村人たちは一体どのような生活を営んでいるんだろう。何度も村に足を運ぶ中で、徐々にその全体像が浮かび上がってきた。厳しい飢えの実態と同時に見えてきたのは、貧困世帯がほとんど収入源を持っていなかったことだ。