過酷なレースに挑む理由「過去の罪悪感を払拭したい」

“世界で最も過酷なマラソン”と称されるアフリカの「サハラ砂漠マラソン」。毎年4月に開催され、太陽に容赦なくあぶられ続けながら1週間かけて250kmを走りぬく。気温は常に50度超え、砂漠の地表面温度は70~80度と、熱したフライパン級の暑さ。

1時間に1リットル以上の水を飲まないと、瞬く間に脱水症状を起こし、動けなくなる。そんな肉体的にも精神的にも限界を試す場が、まさに「サハラ砂漠マラソン」なのだ。

実は記者自身も「限界を超えた後の自分がどう変化するのか知りたい」という興味本位から、昨年初めてこのレースに参加した。あまりの過酷さにレース中、参加したこと自体を激しく後悔したりもしたが、同時に「ここに挑戦する参加者たちは一体何者で、何を求めて参加したのか」、そんな素朴な疑問が浮かび上がってきた。

そんな中で出会ったのが、格闘技ジム経営者の桜木裕介さん(43)だった。

「かつて仕事仲間が死んでしまい…。僕だけが幸せでいいのだろうか、という罪の意識をずっと持っていました。罪悪感から逃れるために、自分自身に辛いことを課すという名目で、肉体を限界まで苛め抜くようなスポーツに次第にハマっていきました」(桜木さん、以下同)

それに伴い、ありとあらゆる過酷なレースに参加していったというが、トライアスロンの代表的な大会「アイアンマンレース」に参加した際、海外の参加者に「アイアンマンよりサハラ砂漠マラソンの方が過酷だぜ」と言われたことがきっかけで、今回の出場を決めた。


サハラ砂漠マラソンに出場する桜木さん(本人提供)

サハラ砂漠マラソンに出場する桜木さん(本人提供)