援助は怪物
稼ぐ手段のない村人たちは、茂みの中で木を切り倒していた。そこで得た木の枝を束ねて薪として販売する。炭焼きをして販売する。小さな環境破壊によって成り立つ小規模ビジネスだ。そうして限られた環境資源を消費しつつ日銭を稼ぎ、1食分の食料を購入し、家族と分かち合う。
「1日1食ありつければありがたい。全く食べられない日もあるから」とある村人は語った。生活における最も大きな困難は、どこに行っても「飢え」だ。そして生きるための基本ともいえる食が満たされない状態は、若者を悪の世界に誘う。
窃盗団の襲撃によって夫を亡くし、3人の子どもとともに村に取り残された女性は涙ながらに語った。
「もうこりごりだ、でもこれが私たちの生活だ」
今この場所で最も必要とされているのは食べ物だ。そして食べ物は水と土さえあれば作ることができる。プロジェクトの目的である灌漑農業を通した地域内での食料生産によって、人々の暮らしはきっと変わっていくはずだ。
私たちが取り組もうとしているのは、地域住民が自らの力で、農業を通じて生計を立てられるような自立を促す支援、すなわち「自立支援」だ。
援助は怪物だ。
援助は人間の精神の奥深くまで入り込み、依存というスイッチを押すことができる。一度スイッチが押され、世界が切り替えられたら、元の場所には決して戻ってこられなくなる。泥沼の底まで私たちの心を引きずり込んでしまう。
受益者を選ぶためのプロフィール調査の中で「あなたの村で、誇りに思うことは何ですか?」という質問項目がある。文化、伝統ダンス、人の優しさ、友情など、さまざまな回答がある中でひときわ目立ったのが「NGO」「食料配布」といった援助に関する口述だった。
それらの単語は住民自身の口から当たり前のように発せられた。この数十年間に行われた食料援助という「現象」は、人々の暮らしと一体化し地域の誇りと呼ばれるまでに成長していた。













