2万5000店舗日本食レストラン、日本人オーナー1割のみ
さらに日本ではアメリカは日本食ブームと言われています。確かにアメリカには2万5千件以上の日本食レストランがありますが(JETRO調べ)、その中で日本人オーナーの店は1割程度。そのため、日本食レストランがブームになっても日系のコミュニティにはお金が落ちてきません。
以前私がニュージャージー州に住んでいたとき、会社の近くにある中華レストランが隣の建物を買って日本食レストランを開いたのですが、そこの煮込みうどんはアスパラガスが入っている「なんちゃって日本食」でした。
その店のオーナーがこう語っていたのをよく覚えています――「ランチでビーフ・アンド・ブロッコリーだと5ドルしか払ってもらえないけど、照り焼きビーフだとアメリカ人は10ドル出すんだ」と。こういう日本食への愛のないオーナーがアメリカの日本食レストランを経営しているのです。
こういった話は本当にありふれたもので、せっかく和食がユネスコ無形文化遺産に登録されても、今のロサンゼルスの人気しゃぶしゃぶ屋さんの店内はこんな感じです。
これでいいのか「日本食」
また、日本食はヘルシーなのが売りの一つにもかかわらず、非日本人経営の日本食レストランは巻き寿司に天かすを多く盛るような創作日本食を提供するなどしていてヘルシーとはほど遠く、とても日本食と言えないものが見受けられます。
それに比べて、アメリカにある中華や韓国のレストランのほとんどはその国の人がオーナーです。特に中華に関しては中国本土などから本場のレストランがどんどん進出してきていて、正統派中華を食べることができます。
本物の日本食に限らず、日系人の影はアメリカで年々薄くなり、我々は自信を失ってきました。かつてはカリフォルニアのアジアコミュニティの中で一番活気があったのに……。そして気が付けば、企業が撤退するかのように日本へ帰国する人が増えていったのです。
こんな状況はあまりにも悲しすぎる。
だからこそ、久しぶりの明るいニュースである大谷翔平はわれわれ在米日本人、日系人の希望なのです。彼が活躍し、全米が注目することが我々にとって、アメリカで生きる活力となっているのです。
文/岩瀬昌美