選択的夫婦別姓に反対する山谷えり子参議院議員の言い分

選択的「夫婦別姓」なので、「夫婦別姓」をチョイスしない人は何も変えなくていい。だから、「別姓」にしたい人を邪魔しなくていいじゃん│と思うのだが、「夫婦別姓」反対派の人びとにとっては、そんな単純な話ではないらしい。

第五次男女共同参画基本計画案策定にあたって選択的夫婦別姓反対派の旗頭となったのが、自民党の山谷えり子参議院議員だった。山谷は毎日新聞に掲載されたインタビューで、次のように語っている。

選択的夫婦別姓反対派の旗頭となった自民党の山谷えり子参議院議員(写真中央・本人SNSより)
選択的夫婦別姓反対派の旗頭となった自民党の山谷えり子参議院議員(写真中央・本人SNSより)

選択的とはいえ、夫婦別姓を認めると、一つの戸籍に二つの氏が入る。ファミリーネームの廃止になり、氏がファミリーの名前じゃなくて、個人に所属するものになっていく。〔中略〕

今は、夫婦別姓の議論に限らず個人や多様性を大事にしようという時代。私もそれ自体は良いことだと思う。しかし、一方で個人や多様性を大事にするためには、社会全体の温かさや寛容さが必要。

個人は1人で育つわけではなくて、家族という社会の基礎単位で人格や情緒が育ち、さまざまな文化の伝承を学ぶ。家族によって温かな社会が保たれ、それによって個人も守られる。

菅内閣は「自助・共助・公助、そして絆」を目指す社会像と言っている。日本の場合は、絆というのが大きなパワーだった。絆というのは縛りにもなるから抑圧だという人もいるが、絆という面をやっぱり大きく豊かに時代に合わせて育てていくという知恵が日本の底力につながっていくと思う。(毎日新聞)

彼女の論立ての特徴は次の三点だ。

①ファミリーネームの廃止となり、氏が個人に所属するものになっていく
②個人は一人で育つわけではなくて、家族という社会の基礎単位で人格や情緒が育ち、さまざまな文化の伝承を学ぶ
③家族によって温かな社会が保たれ、それによって個人も守られる(これが菅内閣の「自助・共助・公助、そして絆」の基礎にある)

自民党政権下で、いったいどこに「温かな社会」があるのか。そんな社会はとっくに失われているではないか│と直感的にもツッコミたくなるが、ここにあらわれた夫婦別姓反対派の家族観をもう少し観察してみよう。