「日本人」を再生産する場として位置づけられた「家族」

山谷の談話で重要なのは②で、ここに彼らにとっての「家族」の意義が示されている。

人間は社会的動物なので一人で育つことはできないというのはあたりまえだが、だからといって人が育つ場所は「家族」という小さな共同体だけとは限らない。しかも現在の日本ではさまざまな形態の「家族」が存在しているにもかかわらず、山谷においては「ファミリーネーム」=氏を共有する集団のみが「家族」であるかのようだ。

その「家族」の機能として求められている「さまざまな文化の伝承」とは、どういうことなのだろうか?

山谷も所属する日本会議のイデオローグ・八木秀次(麗澤大学国際学部教授)は次のように述べている。

家族こそは世代を超えて文化を伝承していく場所であり、次世代の国民を育てる場所である。家族の機能がおかしくなると、犯罪が増え、社会秩序も乱れる。

山谷えり子の「さまざまな文化の伝承」が、八木の言う「家族こそは世代を超えて文化を伝承していく場所であり、次世代の国民を育てる場所」の変奏であることがよくわかる。「日本人」を再生産する場として「家族」が位置づけられているのである。

名前を掲出していない表札
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文/早川タダノリ 写真/shutterstock

『「日本スゴイ」の時代 カジュアル化するナショナリズム』(朝日新聞出版)
早川タダノリ
『「日本スゴイ」の時代 カジュアル化するナショナリズム』(朝日新聞出版)
2025年6月13日
990円(税込)
288ページ
ISBN: 978-4022953193
「クールジャパン」「観光立国」を始めとする国家的文化政策を筆頭に、書籍・雑誌・ムックからテレビ・ラジオ番組、人材育成セミナーなど、さまざまな媒体を介して社会的に広がっていった「日本スゴイ」コンテンツは、どんな機能をはたしているのか――具体的なエピソードの中から読み解く。
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