コメの価格が上がって「もうちょっと頑張ってみようかな」って…
いずれにしても、国民の命をつなぐ食を支えてきた農家の苦境は続く。1億円という巨額の借金を抱えてコメを作り続ける岡田さんに、不安はないのか。
「とにかく馬車馬のように働いて返すしかない感覚なので、不安になっているヒマがないんですよ。農業で返せなくなったらアルバイトしてでも返すしかないんで。借金も最初は怖かったけど、1回借りられたら『借りられるんだ』と妙に自信がついて、それから必要に応じて借りてるうちに雪だるま式に増えたんですよ。
不思議なもので耕地が2ヘクタールの時は200万円を動かすのが怖かったのに、20ヘクタールになったら2000万円でも平気で動かすって感じになりました。周囲を見渡すと今年も離農する人はいますが、コメの価格が上がったことで『もうちょっと頑張ってみようかな』と踏ん張っている人もいます。
私は何も知らずに農業に入ってほんとに『食えねえんだな』って(笑)。それでドーンって借金もして、一度広げた風呂敷の畳み方もわからず行くしかないって感じでここまで来ちゃったんで。私の最後の目標は次の世代に繋ぐことですから。農業が好きで、この楽しさを後世にも伝えていきたい。やっぱり種まいて実になって、それを喜んで買ってくれる人がいるのは楽しいですよ」
農業の未来を担うのは人気取りを目論む政治家ではなく、五穀豊穣を期して日々汗水垂らす農家であり、国民である。株価の上下に一喜一憂する企業が支配する「市場」に売り渡せばどうなるのか、われわれ一人ひとりが真剣に考えなければならない時期は、とうに来ているのだ。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班