「仮に企業が入って価格を決め始めたら、今より高くなりますよ」 

今スーパーに並んでいる古古米やコンビニで売り始めた古古古米についてはどう考えているのか。

「農協はなるべく食味を落とさないように新米と備蓄米を混ぜてブレンド米として売ろうとするなどしていたのに、小泉大臣はそういうのをはしょって古古米を出してきた。農協の努力をへし折るような行為だと思います。

単年度産で精米すれば誰でもスピードを持って出せるんですよ。新米に関しては影響ないでしょうけど、古古米が5キロ2000円程度になるとその前に放出した備蓄米はそれより高いわけですから普通に考えれば売れないでしょうね。古古米の適正価格としては醤油や味噌に使う加工米の価格設定だと思います。

一般的にはこれまでそんな古いおコメをわざわざ主食米として使う必要はなかったので『値段がつけば』という話になりますが、古古米なら5キロ1000円とか1500円くらいじゃないですかね。政府が価格調整して2000円で出しているんだとは思いますが、いずれにせよ本来安くなってしかるべきものなんですよ」

味についてはどうなのか。

「低温で保存していたわけですから、古古米も古古古米も新米と比べてちょっと食感が固くなるくらいで他は変わらないと思いますね。

私も保冷庫にうっかり忘れていた3年前のおコメを食べる機会がありましたけど、われわれはプロなので香りが違うなどわかりますが、一般の消費者がわかるレベルの変化かと言えばわからないと思います。コシヒカリが柔らかくて好きじゃないって人だったりすると逆に古古米の方が好きって人がいてもおかしくないと思いますよ」

今年3月撮影した際の岡田さん(撮影/集英社オンライン)
今年3月撮影した際の岡田さん(撮影/集英社オンライン)

小泉氏は自民党農林部会長だった2016年、農産物の販売をほぼ独占している全国農業協同組合連合会(JA全農)に対して販売手数料や流通構造の見直しを求めるなどして、JA側と対立。

協同組合として独占禁止法を免れていた全農を株式会社化して競争原理が働くようにするというのが小泉氏のロジックだったが、この時はJAの支援を受ける自民党農林族という“抵抗勢力”の反対で見送られた経緯がある。小泉氏が「捲土重来」を期して農協解体に切り込むと見る向きも多い。

「正直、小泉さんが大臣に決まって周囲の農家みんなで『はぁーヤバいなー』と溜息をついたくらいです。農協を民間にと言い出す危険性があると思わざるを得ない。党の農林部会長時代、農協を破壊しようとしましたから。農協に出荷もせず出資金も出してない人たちの集まりの中で、農協改革を叫んでいたわけで、農協の市場を奪いたかったんだと思います。

これが現実的に起こったら危ないどころの話じゃなくて、農家は潰れると思います。仮に企業が入って価格を決め始めたら、今より価格は高くなりますよ。コメの価格が高騰したこの2年でも私の収入は最低賃金を割っていて、昨年の時給を計算すると600円くらいです。『コメ農家の時給は10円』という報道がされたことがありましたけど、さすがにそこまで安いことはなくても、高騰化以前の時給は200円とか300円ぐらいのもんでしたよ。

もうちょっと上手にコスト削減すれば最低賃金割らずにできるかもしれませんが、そこはいい物を作ろうとすると省けないんですよね。私の周囲の農家は政府というより小泉さんひとりを危険因子と認識している状態ですね。農協が潰れて農家がいなくなったら、技術の継承もできなくなって耕作放棄地の問題も拡大するでしょうし、今より状態は悪化すると思います。農協はテコ入れして中身を整理整頓してあげればいいだけなんですよ」