なぜ五次問屋まで存在する多層構造が生まれたのか? 

米卸売業は玄米を仕入れて白米に加工して販売するというビジネスモデルのため、付加価値を生み出しづらい。それが薄利多売を引き起こす一番の要因だ。米価格が高騰する前に行なわれた三井住友銀行による調査(「米穀卸売業界の動向」)によると、事業者の3割程度が赤字だったという。

米価の変動にも翻弄され、経営基盤が安定していないにもかかわらず、数多くの事業者が永続的に事業を展開してきたのは、不動産業などの副業を営んでいるケースが大半だからだ。

業界トップの神明ホールディングスでさえ、米穀事業の売上は全体の3割程度。ここでは青果事業が成長を支えている。上場企業のヤマタネは、食品事業の営業利益率は米価高騰後も4.7%ほどだが、不動産事業は41.0%だ。

また、米卸売業者は寡占化が進んでおらず、中小零細の事業者が大部分を占めている。これは、かつて米の生産が各都道府県で広く行なわれており、それを前提として多くの流通事業者が誕生したためだ。加えて事業者の多くはいわゆる地元の名士と言われる資産家が多いことも特徴となっている。

さらに「米の流通に関与している」という社会的な責任感とプライドも相まって再編が進まない。こうした要因が重なり、五次問屋という多層構造が解消されずにいるのだ。

町の米穀店を視察する小泉大臣(写真/本人SNSより)
町の米穀店を視察する小泉大臣(写真/本人SNSより)

この現状を踏まえ、小泉氏が委員長を務める「農林水産業骨太方針策定プロジェクトチーム」は、「生産者・JA等が、自ら販路を開拓するとともに、流通を合理化してコストを削減」、「生産者・JA等と実需者との間で事前契約や複数年契約などの安定取引を促進」することで、生産者と消費者にとってより有利な取引を実現できると提案していた。