出演者の「忘れられる権利」がないがしろにされている現状

「1-4ヶ月ルール」以外に語られたのが、出演者の「忘れられる権利」の問題だ。

アダルトビデオ業界では、出演者の権利を守るため、申請があれば作品の取り下げをおこなっている。しかし逆に言えば、取り下げ申請がなければ、作品が永続的に販売されてしまう状況となっているのだ。

また、出演者本人の申し出が必要な点も問題のひとつ。

実際、前述のかさい氏のもとには「亡くなった女優の家族から『作品を削除できないか』と相談があった」という。

議員向けに勉強会を開いた一般社団法人映像実演者協議会と参加した議員の面々 前列右から3番目の女性がかさい氏
議員向けに勉強会を開いた一般社団法人映像実演者協議会と参加した議員の面々 前列右から3番目の女性がかさい氏

そこで新法への要望として提言されたのが「発売から5年経過した作品は削除する」ルール。

5年経過後も作品を販売したいメーカーは、出演者と再度契約を結ぶことで継続販売を可能にすれば、出演者の人権保護につながる、との意見だ。

アダルトビデオ業界の話ではないものの、2023年に亡くなった歌手・八代亜紀さんの「フルヌード写真付きCD」の販売が、つい先日に大きな話題となった。現在でも「法律的には問題はない」とされているが、故人の尊厳や遺された親族の心情を考えれば、許し難い状況だ。

これと同様の問題が起きないように、新法見直しによりルールを整えることを映像実演者協議会は希望している。

ほかにも複数の問題提起がなされた勉強会には、複数の政党の議員が多忙のなか参加していた。

参加した議員からは

「望まない出演は阻止していくべきだが、自分の意志で出演を決めた方々の職業選択の自由は守られるべき。きちんと健全に働き続けられる環境作りをしていく必要がある」(五十嵐えり 衆議院議員 立憲民主党)

といった意見や海賊版への対応が遅れていることへの指摘も。

「過去の『漫画村』事件の際には、日本の文化が流出しているとすぐに動いたのに、AVコンテンツの海賊版に関しては放置状態になっている。今後もこのような勉強会を通して、意見交換をしながらAV新法の改正を含め議論を重ねていきたい」(やはた愛 衆議院議員 れいわ新選組)

ただしこれらはあくまでも「実演者」視点の問題点と改善点である。

業界には、他にメーカーやプロダクションなども存在しており、新法に対してはまた違った視点での考え方が存在する。

実演者の権利を優先するのは当然の話ではあるが、メーカーやプロダクションとも連携をおこない、業界が一枚岩となって健全化を進めていくことで、新法改正もスムーズに進むのではないだろうか。

取材・文/蒼樹リュウスケ