エロ本の自動販売機が至るところにあった
ネットも何もなかった時代、エロ本は普通に町の書店で販売されていた(昭和後期になると、神田・芳賀書店のような専門店も営業を開始していた)。
だが、それとは別にエロ本の自動販売機も各所に設置されており、「書店で買うのは恥ずかしい」「買おうとしても、断られる可能性がある」「もし買っているところを知り合いの誰かにみられたら、学校や近所で笑い者にされる」等々考え込んで悶々としていた男子中高生たちは、夜更けになるとそこまで買いに行ったりしていた。
自販機は街なかだけでなく、なぜか畑のそばの暗い道などにポツンと設置されていることもあった。
ただし昭和中期までのエロ本はモデルの質が今イチで、表紙はさておき、中身は30代半ばの得体のしれない女のセーラー服エロ写真、といったゲテモノであることが少なくなかった。そのため、どうしても質のよい本が欲しかったり、ある程度内容をチェックしてから決めたい、という男子は、電車に乗って遠くの街まで買いに出かけたりしていた。
購入した本は、親にバレないよう参考書のカバーなどを付けて、押入れの奥にしまったりすることもよくあった。「そういう本を他人にみせるのは、せいぜい親友が部屋に遊びに来た時くらいだった」と語っている人も多い。
昭和オヤジにとっては、今となれば恥ずかしくも笑える、青春の思い出であろう。
文/葛城明彦 写真/shutterstock