エロ本の自動販売機が至るところにあった

ネットも何もなかった時代、エロ本は普通に町の書店で販売されていた(昭和後期になると、神田・芳賀書店のような専門店も営業を開始していた)。

「エロスの聖地」とも呼ばれる芳賀書店本店(編集部撮影)
「エロスの聖地」とも呼ばれる芳賀書店本店(編集部撮影)
すべての画像を見る

だが、それとは別にエロ本の自動販売機も各所に設置されており、「書店で買うのは恥ずかしい」「買おうとしても、断られる可能性がある」「もし買っているところを知り合いの誰かにみられたら、学校や近所で笑い者にされる」等々考え込んで悶々としていた男子中高生たちは、夜更けになるとそこまで買いに行ったりしていた。

自販機は街なかだけでなく、なぜか畑のそばの暗い道などにポツンと設置されていることもあった。

ただし昭和中期までのエロ本はモデルの質が今イチで、表紙はさておき、中身は30代半ばの得体のしれない女のセーラー服エロ写真、といったゲテモノであることが少なくなかった。そのため、どうしても質のよい本が欲しかったり、ある程度内容をチェックしてから決めたい、という男子は、電車に乗って遠くの街まで買いに出かけたりしていた。

購入した本は、親にバレないよう参考書のカバーなどを付けて、押入れの奥にしまったりすることもよくあった。「そういう本を他人にみせるのは、せいぜい親友が部屋に遊びに来た時くらいだった」と語っている人も多い。

昭和オヤジにとっては、今となれば恥ずかしくも笑える、青春の思い出であろう。

文/葛城明彦 写真/shutterstock

『不適切な昭和』(中央公論新社)
葛城明彦
『不適切な昭和』(中央公論新社)
2025年5月9日
990円(税込)
232ページ
ISBN: 978-4121508416

いまとなってはありえない!
これが令和の日本とは同じ国とは信じられない事実の連続。なつかしくもおかしい昭和の時代の景色を今によみがえらせる。コンプラ意識ゼロの怒濤の常識、非常識。


第1章 社会――暗くて汚かった街
第2章 学校――カオスな、もうひとつの小社会
第3章 家庭と職場――のん気なようで意外と地獄
第4章 交通――ルール無用の世界
第5章 女性――差別もセクハラも放ったらかしだった頃
第6章 メディアと芸能界――規制ユルユル、何でもやり放題

amazon