証拠のために職務質問を撮影したらカスハラ?

では、自治会役員がカスハラに遭うケースとしては、どのような状況が想定されているのだろうか。

「想定されるのは、例えば、自治会などの地域住民有志が見回りやゴミ拾いといった活動を行なっている際に、近隣住民から著しい迷惑行為に当たるような行為を受けるケースです。

また、ガイドラインでは〈地域の伝統文化の伝承活動に従事する人〉も就業者の例として示しており、たとえば夏祭りやお神輿、餅つき大会などで著しい迷惑行為に該当するような言動があれば、カスハラにあたる可能性があります。

さらに、地域活動の一環として『生活の支援』にあたる生活困窮者への訪問を行う巡回相談員も、就業者に該当するとされています。こちらも、業務中に著しい迷惑行為を受けた場合は、カスハラとして扱われる可能性があるでしょう」

例えばお祭りの音が気になるからといって、夏祭りの運営に対して迷惑行為を行うと、カスハラになる可能性がある。写真はイメージです(PhotoACより)
例えばお祭りの音が気になるからといって、夏祭りの運営に対して迷惑行為を行うと、カスハラになる可能性がある。写真はイメージです(PhotoACより)

続いて話を聞いたのは、「公的機関職員」の欄に記載されている警察官や消防職員について。緊急対応とはいえ、パトカーや消防車が自宅の前に停まることで市民が不便を感じることもあるだろう。こうした場面でクレームを入れた場合、それはカスハラと見なされてしまうのだろうか。

「たとえば『ここに停めるな!』と一度伝えただけで、必ずしもすぐにカスハラと判断されるわけではありません。その場所が私有地であり、正当な申し出である場合も考えられますので、あくまで状況次第です。

ただ、最近よく耳にするケースとして、職務質問の際に警察官への暴言・暴力や無断で撮影してSNS等で公開する行為があり 、カスハラに該当する可能性があります」

写真はイメージです(Photo ACより)
写真はイメージです(Photo ACより)

次に尋ねたのは、プライベートな時間にも業務が入り込みやすい「家族従事者」や「家内労働者」についてである。

「家族従事者とは、たとえば個人商店で家族が手伝っているようなケースを指します。 一方、家内労働者は『家内労働法』に基づき、自宅を作業場として業務を行なっている方です。

これらの方々は、たとえ労働時間外であっても、業務に関して不当な要求や著しい迷惑行為を受けた場合には、カスハラとして扱われる可能性があります」