育った街をゆっくりと歩く

もう一つは子供のころに育った街を、ゆっくりと歩いてみてください。

通学路を、当時を思い出しながら一人で歩いてみます。今も同じ土地に住んでいるという人であっても通学路を歩くことはしないでしょう。ぜひ噛み締めながら歩いてみてください。私は、年に一回、必ず通学路を歩くようにしています。

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通学路を歩くと、いろいろな感情や感覚があふれ出てきます。とくにその土地を離れて以来、歩いていなかった人は効果絶大でしょう。子供のころの感覚、大事にしていたもの、熱中していたこと、毎日何を思い、将来に何を夢見ていたのか。あなたが本質的に求めていることや生まれながらにして持っている価値観を再確認できるはずです。

私は何度やっても家族の姿が思い出されます。私の家族は小学校六年生のころにバラバラになりました。父の会社が倒産して多額の借金を抱え、両親は離婚し、生まれ育った土地を去り、父と祖母とは離れ離れになりました。

思い出されるのは食卓です。何十年も前に売りに出されて他人が住んでいる家の情景。

そこでは、兄と祖母を含む家族5人でいつも笑いながら楽しく暮らしていました。しかし、お金のせいで仲がよかった家族はバラバラになりました。

お金に対する強烈なトラウマとともに、いつもおにぎりつくって笑ってくれていたおばあちゃん、いつも冗談を言って笑わせてくれたお父さん、いつもいろんなことを心配して先回りして準備してくれたお母さん、いつも優しく頼りにしていたお兄ちゃんといった、かけがえのない家族の顔が思い出されるのです。

歩くたびに私が本質的に求めているのは、いつも家族の幸せなのだと感じます。仕事で財を成すことでも、名前を後世に残すことでもない。ただ自分の大切な家族とできるだけずっと一緒に笑っていたい。

だから私は家族との時間を大切にするよう心掛けています。東京での仕事がいくら忙しくても、他愛のない話しをするためだけに新潟に帰ります。今はこの世にいない父を思い出し、母には愛情をもって恩返しをし、兄にはいろいろなことを相談しています。そして何より家族の生活を守るために仕事を続けています。

もちろんそうした家族のこととともに、自分が熱中していたこと、自分の根源的な欲求にも触れることができます。

自分にとって何が大切なのか、何に熱中していたのか、何が好きなのか、何に幸せを感じるのか。美意識や価値観を見失ってしまった人は通学路を歩いてみてください。