友人からバイクを借りパク、返却を求められると…

実際、白井容疑者は、次にアメリカへの逃亡を考え、実行している。この行動も、キーになったのは母親だった。
関係者によると、白井容疑者母子は家の中でもメッセージアプリでやりとりする関係で、母親は「秀くん」と呼びかけて敬語を使い、溺愛している様子がうかがえる。

彩咲陽さんの父が入手した白井容疑者と母親のメッセージのやり取りでは、2月12日に「どっか遠く行く」と言う白井容疑者に対し、母親が「アメリカがいいけれど、パスポートも取っていないし」とアメリカへの渡航を提案しているのだ。

「その後実際に白井容疑者はパスポートを取り、3月に彩咲陽さんの父に『アメリカへ行く』と口にしています。彩咲陽さんの父は警察に、ストーカー容疑かなにかで白井容疑者の出国を止めてくれ、と要請したんです。でもそうはならず、白井容疑者は4月上旬ごろには出国しました。

結局4月30日の捜索で遺体が見つかりました。彩咲陽さんの父が(1日未明になって電話をかけてきた)白井容疑者の兄に帰国させろと強く要求したんです。それを受けたきょうだいの説得を白井容疑者は聞き入れ、5月3日に帰国し、県警に逮捕されました」(家族を支援してきた兵庫県警元刑事の飛松五男氏)

県警は事件の節々に登場する母親に対し、息子の行動についてなにも知らなかったのかと事情を聴いているもようだ。

中学時代の白井容疑者(写真/知人提供)
中学時代の白井容疑者(写真/知人提供)

また県警本部は、消極的とも見える態度を取った川崎臨港署の対応も洗い直すと表明している。これについて捜査関係者は「実は同署と白井容疑者の間には過去にも似た“疑惑”があるんです」と話す。

「白井容疑者が地元の高校に通っていた約10年前、彼にバイクを貸した友人が返してくれと求めたところ、白井容疑者は仲間を引き連れてその友人をボコボコにしたそうです。ところが当時、川崎臨港署がこの件で白井容疑者をまともに調べた形跡がないんです」(捜査関係者)

川崎臨港署は10年前に、白井容疑者の問題をどう扱ったのか。そして今回も彩咲陽さんの家族の切実な訴えがあったにもかかわらず、なぜ白井容疑者を止められなかったのか。それが解明されない限り、事件は決着しない。

彩咲陽さんの遺体が見つかった白井容疑者の自宅前に手向けられた花(撮影/集英社オンライン)
彩咲陽さんの遺体が見つかった白井容疑者の自宅前に手向けられた花(撮影/集英社オンライン)
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班