「もしかしたらお金に困っていた節はあるかもしれません」
――あの団地に移り住んだのはいつのことなんですか。
大学を卒業し放射線技師として就職の決まった5年前のことです。職場の病院に近いからということで、自分で見つけて契約を結んだ部屋でした。もちろん保証人にもなっています。
――とはいえ報道では無職と報じられています。お父さんの認識では勇希容疑者は事故を起こすまで病院で勤務されていたということですか?
はい、そのように思っていました。でも、もしかしたらお金に困っていた節はあるかもしれません。
3年ほど前に大学に入る時に借りた奨学金の返済が滞っているという手紙が実家に届くようになりました。奨学金自体は数十万円を借りていて、月々の支払いも1万円もいかない程度でした。
そうした督促状が何度か届き、私の方から「お金を渡すからもう払ってしまうように」と言って数十万円渡しました。それで奨学金を払ったのかどうかもわかりませんし、他にも借金していた可能性もありますが、それはわかりません。
――自殺未遂を起こすまで、団地での単身生活でどのような変化があったのですか。
私たちが引っ越しを手伝って間もない頃は、部屋も綺麗に掃除をして身なりも整えていたのですが、2年ほど前からだんだんと無精髭を生やし、部屋も汚くなり痩せている様子がうかがえました。
妻は頻繁にLINEなどで連絡をしていたようでしたけど、それにも一言返事がある程度で「大丈夫だ」としか言わないような状態で、コミュニケーションは取れていませんでした。
――そういう変化が見られる中で「このままでは息子がどうにかなるのではないか」というような不安は感じなかったのですか。
もちろんそれは常に感じていました。だからこそ「もうどうにもならなくなる前に言いなさい」と言ってきた。
無理矢理家に引き戻すこともできたかもしれないが、本人は大人であるし尊重したつもりだった。それがこんな事件を起こすことになってしまったとは、お詫びしてもしきれません。
――「全てが嫌になったから、轢き殺そうと思って小学生の列に突っ込んだ」と供述している矢沢容疑者。父親は「普通に育てて、普通に大学を出て、普通に就職をして、それを喜んでいたのですが、こんな事をするなんて……。私はどうしたらいいのか、どうすればいいのでしょう?」そう言うと深々と頭を下げ、涙を流した。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班