事業者たちの万博への落胆

大阪に暮らす者の実感として、当時の「大阪・関西万博」に対する期待感の根底にはダウンタウン効果が絶大にあった。

2018年11月に大阪での万博開催が決定すると、その熱気はさらに上昇。特に中小の企業や事業者からは、万博を念頭に置いた新しいプロジェクトの立ち上げや、長期的な経済効果を狙った動きが目立った。

筆者の周りの事業者らの多くも「万博に向けてやっていきたい」と息巻いていた。ダウンタウンはその熱い渦の、まさにど真ん中にいたのだ。

しかし「大阪・関西万博」の準備が難航する上、2020年からの新型コロナウイルスの影響も含めた経済的ダメージが重なると、市民から開催自体への反発の声が膨らんでいった。

そしてその反発の決定打の一つに、松本の性加害疑惑と芸能活動休止があるだろう。

以降、浜田だけがアンバサダーとして稼働する目立った機会は見られず、ダウンタウンという“目玉”を欠いた「大阪・関西万博」のプロモーションは目に見えて生彩を欠いていった。

関西のメディア関係者たちも、万博開催の1年前、いや、半年前になっても「中身が全然見えてこない」「プロモーションがしっかりなされていない」と首をひねるほど。あまりの進行の遅さに、万博特集企画をとりやめるメディアもあったぐらいだ。

そうしているうちに、前述したような中小の企業や事業者らの口からも、「万博」に期待する言葉がほとんど出てこない状況に陥った。

そういった人たちが集まる会合に行くと、それぞれの頭上に「万博(苦笑)」という吹き出し台詞が浮かんで見えた。

さらに「なぜ『大阪・関西万博』が盛り下がったのか」という話題になると、必ずどこかのタイミングで「ダウンタウンが稼働しなくなったからではないか」という意見が出た。

それだけ、ダウンタウンの存在は「大阪・関西万博」のイメージに大きな礎として結びついていたのだ。ダウンタウンとしても、すでに60歳を過ぎており、お笑い芸人としては間違いなく熟年に差し掛かっていたことから、万博事業を最後の大仕事に位置付けていたように見受けられた。

しかし、さまざまな歯車の狂いが生じた。その狂いが「大阪・関西万博」に落胆の影を落とすようになったのではないか。

Expo2025 (大阪・関西万博公式Xより引用)
Expo2025 (大阪・関西万博公式Xより引用)

一方、万博関連の取材を行なっていると「それでもやっぱり万博には行きたい」という声もたくさん聞く。実際、会場内を取材した関係者は前向きに万博について語っていた。

「大阪・関西万博」の準備に携わったクリエイターは
「2005年の『愛知万博』(愛・地球博)然り、万博は会期中に成長していくものだと捉えています。現場に入っても、確かに現状は未完成なところがたくさんあった。でも半年かけていろいろ変化していくと思います」

また中小企業・事業者が集まる会合などでは、万博出展者、万博事業者に対して依然として尊敬や羨望のまなざしが向けられる。

そういった現場の温度感を踏まえると、ダウンタウンがアンバサダーを退任し、今後の活動復帰も不透明とはいえ、万博会期中の浜田の活動復帰、万博会場への来場はやはり効果的であり、多くの大阪府民が待ち望むことではないか。さらに言えば、「浜田復帰の最初の舞台は万博」がもっとも理想的な流れなのかもしれない。

文/田辺ユウキ