男は女より三歩下がって歩くべし
――これまでモテテクニックとされてきたことには、女性を尊重しない性質のものがあった、と。
たとえば同意を得られて、ホテルなどへ移動する際にも、決して女性の手を引いたり、背中を押すような動作は避けたほうがよいです。もしもその後、警察の捜査によって防犯カメラ映像などが出てきた場合、「嫌がる女性を強引に連行している」と解釈される場合があるからです。
ホテルや部屋までの道のりは、できれば女性と並行か、その少し後をついていくようおにしたほうがいいです。
──いまや「男は女より三歩下がって歩くべし」の時代ということですね。
そうした同意の確認行為を経て、晴れてベッドインとなっても、がっついてはいけません。実は性行為の際にも、法的リスクの高い体位と低い体位があります。
法的リスクの高い体位は、正常位です。性犯罪事案においては「上から押さえつけられて動けなかった」という女性の証言が非常に目立ちます。男性にとってはただの正常位でも、女性からすれば押さえつけられているということがありえます。一方で、騎乗位をしていて訴えられたという話は聞いたことがありません。
──女性が身動きをとりやすい騎乗位に至っているということは、不同意とは考えられないということですね。
はい。また、通常の性行為には同意していたとしても、イレギュラーな行為をされ陵辱されたと感じる女性も存在します。
例えば、後背位の際にお尻を叩く行為や肛門性交です。こうした行為により女性の体にアザや出血が生じた場合、不同意性交等罪よりさらに重い「不同意性交等致傷罪」で訴えられる可能性があります。
プレイが始まっても「どんな体位が好きなの?」とか「性感帯はどこ?」などと細かく聞いて、それに従っていく姿勢が大切です。
──恥ずかしがらず、なんでも口に出して確認することが大切だと。
事前に「ゴム買っておこうか?」とか「今日は〇〇なプレイをしようね~」と、自分の下心をあけすけにLINEで送っていたりすると、それも同意の確認になりますね。
ただし、気持ち悪がられたり、セクハラになったり、迷惑防止条例違反に問われる可能性も否定できないので、お勧めはしませんが。
──不同意性交等罪の加害者にならないためには、ここまで見てきたような各段階における同意の確認の行動を取ることが必要ということですね。
ここまでは、行為前や行為中の同意の話をしてきましたが、さらに重要なのは、行為後のことです。行為後に男性が急に冷たくなることで、女性のなかに被害感情が生まれて訴えられるケースを、私はたくさん見てきました。
法律を盾に身構えることも必要ですが、本質的に大切なことは、女性に対して誠意を尽くすことなのです。
※
後編では、性行為後の振る舞いが原因で不同意性交として訴えられた男性の事例を通じて、「女性に対して誠を尽くす」とは具体的にどのようなことなのか、さらに詳しく掘り下げていく。
#2 に続く
取材・文・撮影/山下素童
〈プロフィール〉
加藤 博太郎(かとう ひろたろう)
1986年生まれ。慶應義塾大学法学部(3年時まで法学部首席、飛び級のため単位取得退学)・同法科大学院を卒業後、大手監査法人勤務弁護士などを経て、加藤・轟木法律事務所代表弁護士。「かぼちゃの馬車」「スルガ銀行不正融資」「アルヒ・アプラス不正融資」など仮想通貨や不動産投資など数々の投資詐欺事件の集団訴訟(原告側)を担当し有名に。最近ではサッカー選手・伊東純也氏の性加害疑惑で伊東氏側の弁護を担当。メディア出演も多数。ソムリエの資格も持つ。