インバウンドは本当に死角だったのか?
万博の準備で中心的な役割を担ったのは関西経済連合会の松本正義会長だが、誘致活動には熱心だった。それもそのはずで、松本氏が関経連会長に就任したのも、住友電気工業のトップとして活躍する国際派であることが高く評価されたためだ。
結果として、万博の誘致には成功した。そして、2025年1月に関経連会長の続投を表明している。なお、松本氏は万博の機運醸成委員会の委員長にも選出されており、集客の総責任者でもある。
続投会見では「最後まで全力を投じる」と万博の成功に強い熱意を見せており、実際に前売り券の企業への販売目標である700万枚は売り切った。経団連と連携し、企業や団体に購入を働きかけたのだ。
松本氏の財界ネットワークをフル活用した成果が出たわけだが、肝心の一般向けチケット販売が不十分だったのは、続投を表明した2025年1月の時点で明らかだった。誘致活動の成功と企業購入分の目標の達成を果たしたタイミングで、その役目を終えてもよかったのではないか。
松本氏は開幕まで1ヶ月を切った3月19日の会見で、目標の1400万枚に達さない見通しであることに触れ、「インバウンドを見過ごしていた」などと語っている。外国人旅行客のチケット販売を今から伸ばし、最終目標である2300万枚を達成するという。
しかし、この発言には違和感がある。松本氏は関西3空港の役割を官民で議論する「関西3空港懇談会」の座長を務めており、万博開催に合わせて3空港全体の年間発着回数を3割増の50万回にすることで合意させている。
つまり、松本氏が万博の重要なターゲットであるインバウンドなどを見過ごすはずがない。要は国内の一般客の集客計画を十分に整えることができなかった、あるいはそれをやり切ることができなかったということではないのだろうか。