PR費用を国に肩代わりさせたのはなぜか?

PR費用についても、著しく低く見積もっていた様子がうかがえる。

万博の集客対策などに使われる「機運醸成費」は2024年12月に大幅に引き上げられ、40億円から69億円となった。開催直前になって慌てて予算を増額しているのは明らかだが、この予算組みにも甘さが目立つ。

もともとの予算40億円のうち、広報やプロモーションなどを行なう費用はわずか17億円だった。愛知万博の広報宣伝費はおよそ15億円だった。愛知万博を大きく上回る目標を掲げている一方で、予算は心もとない。

近年の物価上昇や、マーケティングの難易度が20年前と比べて格段に上がっていることを考えると、予算不足は明らかだ。もっと早い段階で、多くの予算を確保するべきだったはずだ。

この「機運醸成費」というのも眉唾ものだ。予算全体で集客にどれだけ貢献するのかわかりづらいという、別の問題も抱えているのだ。

注意したいのは、この費用は国が負担をしている点だ。国費が使われているのは、万博を通じて国や地方自治体との交流促進を図るものであり、万博の入場券販売促進を目的としたものではないからだ、という建付けになっている。

大阪万博会場への交通の便も不安視されている 撮影/集英社オンライン編集部
大阪万博会場への交通の便も不安視されている 撮影/集英社オンライン編集部

そのため、地方自治体へのバラ撒きとの批判も根強い「デジタル田園都市国家構想交付金」がこの中に組み込まれているのだ。「大阪・関西万博の開催を契機として、各都道府県において新たに実施する地方創生に資する取組を支援する」というものだ。

採択された事業の一つに群馬県のものがあるが、交付対象事業費は2300万円で、万博に来場する外国人観光客の旅行先に群馬県を選んでもらうためのPR活動費などと、その目的が掲げられている。この経費のうち、2000万円は温泉の魅力を発信するプロモーション動画の制作費だという。

これは万博の機運醸成とはまったく関係なく、万博予算の中に地方創生に必要な資金を無理やりねじ込んでいるように見える。つまり、万博の集客に必要な費用を国が負担するという形になったがゆえに、認知度拡大や来場機運醸成とは関係ない要素が複雑に絡み合い、本来の集客という役割が弱体化しているのだ。

これについては万博の運営側が、集客に必要なプロモーション費用もチケット代で賄うと、覚悟をきめればよかったのではないか。ここにも甘さが見て取れる。

万博会場である大阪「夢洲」は、2030年にカジノを含む統合型リゾートに生まれ変わる予定だ。そこで透けて見えるのは、万博会場の準備は、統合型リゾートのインフラ整備と表裏一体であるということだ。

集客の不備は、万博の先にあるカジノを見据えているからで、誘致そのものが目的だったのではと思えてならない。

大阪万博会場の大屋根リング 撮影/集英社オンライン編集部
大阪万博会場の大屋根リング 撮影/集英社オンライン編集部
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取材・文/不破聡