センバツが勢いだけで勝てない理由

センバツは前年の秋季大会の成績をもとに選出されるため、秋の時点で一定以上のポテンシャルや完成度が高いチームが出場している。

加えて、試合日程が比較的余裕を持って組まれていることから、大会の日程に合わせた戦略やピーキングがより重要で、 夏の甲子園と比べて格段に波乱が起きにくい。

さらに、厳しい練習が課せられる冬明けの時期ということもあり、選手のコンディションもピークに達しておらず、派手な打撃戦よりも、守備の安定や綿密な作戦が勝敗を分ける傾向が強い。

つまり、夏の甲子園と比較して、投手力や守備力を軸とした “ミスを最小限に抑える緻密な野球”が求められる大会といえるのだ。

阪神甲子園球場Facebookより
阪神甲子園球場Facebookより

そしてもうひとつ、センバツの大きな特徴は「勢いだけで勝ち進むことがほとんどない」ということ。その背景には、大会の性質やメディアの影響力の違いがある。

例えば、2023年夏の甲子園で優勝した慶應。実力があったことはもちろんだが、「エンジョイベースボール」といったスタイルが注目を集め、メディアの後押しを受けた。そして甲子園でも“圧倒的ホーム”という状況を創出した結果、大会を勝ち抜いたのだ。

しかし、センバツではこうした甲子園ならではの熱狂的なムードが生まれにくく、純粋にチームの戦力や完成度が試される場となる。実際、慶應は夏を制した年のセンバツで初戦の仙台育英戦で敗れている。実力に差はなかったが、球場でのプレッシャーの有無は非常に大きかったと筆者は見ている。

こうして見ると、センバツは勢いに乗ったチームが一気に駆け上がるケースは少なく、各チームの実力がそのまま結果に表れやすいと言えるだろう。