年収650万から転落 身動きができない状態に

30代男性のフリーランス・前山さん(仮名)は、中島さんとは逆で、この数年で収入が減ってしまった。そこで引っ越しを考えていたのだが、希望の部屋が見つからなくて困っているという。

「8年ほど前に会社を辞めてフリーランスになりました。最初は羽振りもよく、会社員時代よりも年収があがって、30歳手前で年収は650万円になりました。そこで、都内の1LDK、家賃12万円の家に引っ越したのですが……」(前山さん)

その後、新型コロナウイルスの猛威や市場の変化によって、前山さんの現在の年収は450万円に。これにインボイス制度のスタートもあり、手元に残るお金は一気に減ってしまった。

今の収入で家賃12万円を払い続けるのは無理だと思い、引っ越しを考えたのだが、家賃を2万円ほど下げようとすると、家のグレードはガクンと落ち、都心からもだいぶ遠ざかってしまうことから、引っ越しを躊躇しているという。

前山さんが住む家賃12万円の部屋(本人提供)
前山さんが住む家賃12万円の部屋(本人提供)

「引っ越し料金も上がっていて、初期費用を見積もると50万円ほどかかってしまいます。これでは月々2万円を節約しても、元を取るのに約2年もかかります。

どこも家賃があまりにも高いので、試しに私が上京したてのときに住んでいた墨田区のマンションの家賃がどうなっているのか調べてみました。すると12年前、8.7万円だった部屋が、10.5万円で貸し出されていました。

物件の価値って、築年数を重ねるごとに下がっていくと思っていたので、本当に驚きです。都心部での家賃の高騰の現実を目の当たりにしてしまい、引っ越しができずに立ち尽くしています」(前山さん)

結果として、前山さんは無理をしてでも今の部屋に住み続けるという選択しかできなく、どんどん生活が圧迫され続けているという。