東京都内では初めてとなる家賃補助政策

1月31日に東京都杉並区の2025年度予算案を発表した岸本聡子区長。

その区長会見で「私はこれまでも“住まいは権利”と申し上げており、住宅政策と福祉政策、子育て支援政策が地続きであるとの認識に立ち、安定した住まいを確保することは、健康で文化的な生活を営む上で欠かせない重要な要件だと考えています」と述べ、低所得の住民でも安定して居住できる住宅を供給することは行政の責務だと強調した。

区長一期目の岸本氏は実際、家賃助成制度の創設も含めた住宅施策の充実を、2022年の選挙の公約で掲げていた。

さらに岸本氏は、「区ではこれまでも住宅に困窮する低額所得者に対して区営住宅の提供を行なってまいりましたが、希望者すべてが入居できる状況にありません」と、従前の住宅政策では低所得者への住宅供給に限界がある事情を説明。

一方で、民間賃貸住宅の空き部屋が増えており、これの有効活用も考えたと説明している。

1月31日、住宅政策を盛った新年度予算案を記者会見で発表する杉並区の岸本聡子区長(YouTube杉並区公式チャンネル)
1月31日、住宅政策を盛った新年度予算案を記者会見で発表する杉並区の岸本聡子区長(YouTube杉並区公式チャンネル)

行政による家賃補助は、地方ではUターンや移住促進策の一環として広がっており、東京都内でも、生活支援目的や、同じ自治体内で引っ越して家賃負担が増えた世帯を支援する目的で家賃補助を行なっている自治体もある。

しかし、今回の発表会見で目を引くのは、公営住宅に入居できなかった世帯に、代わりに民間住宅に入居する家賃を補助する施策をすることだ。

こうした仕組みは都内では初となり、さらに全国的にもかなりまれなケースとみられるという。

公営住宅の戸数が入居希望に追い付かず、今後も増加が見込めない中、自治体の住宅関連予算が民間物件の借り上げに本格的に投入される契機になる可能性もある。