コメの高騰に「今後も農業を続けていけるとホッとした」

昨年から続くコメ価格高騰については、こう話す。

「農協相場から大きく逸脱しない範囲で相場が上昇したので、昨年よりは販売価格を上げています。ウチではアイガモ農法のコメが30キロで2万2000円くらい、普通に作ったコメが1万3000円くらいです。

私はコメ作りを始めてまだ10年も経たないけど、これまではずっと安いままで相場が安定していました。正直、コメ専業はそれなりに面積をやらないと生活も大変です。とはいえ、去年はいくらなんでも一気に上がりすぎだし、消費者にこの金額で提示するのにはすごく葛藤がありました。

ただ、生産者側からすれば、やっとまともな価格になったなってぐらいで、生活が豊かになるというより、これで今後も農業を続けていけるとホッとしたという感じです。

正直、農機具を買うために仕事してるみたいなところがあるんです。農地の広さや使い方にもよりますけど、うちは5年くらいで買い替えなきゃといった感じで今年新調しないといけなかったんで、本当少しホッとしました。トラクターやコンバインなどは1000万円を超えますからね」

コメ専業はそれなりに面積をやらないと生活も大変」と語る田宮さん(写真/集英社オンライン)
コメ専業はそれなりに面積をやらないと生活も大変」と語る田宮さん(写真/集英社オンライン)

今後の米価やコメ農家については、どう考えているのか。

「今の価格は高すぎるので、もう少し落ち着いてくれればと思いますが、数年前みたいに下落しすぎる事の方がよっぽど怖いです。コロナの時など会食需要がなくなり、家庭だけでは消費しきれなくてコメが余り、コメの相場は30キロ5000円でしたから。

それから収穫量も去年は思ったほどありませんでした。暑さとカメムシの大量発生でウチもひどい目にあいました。殺虫剤を使わないことが裏目に出て、加工用米に作っていた品種がやられていました。これも正直、収穫が始まってから『ひどいな』ってわかった感じでした。カメムシの発生時期の草丈は、アイガモが届く高さではないので、カメムシを食べてもらうことができないんです」

(写真提供/田宮竜平さん)
(写真提供/田宮竜平さん)

コメ農家はやりがいもあるが、やはり一筋縄ではいかない大変さがある。

「生産者としてはお客様から『おいしい』と自分のおコメを評価していただくのは励みにもなるので、コメ農家に新規参入してくれる人が増えれば嬉しいとは思います。しかし、米価が上がったとはいえ、生活できる規模でコメ農家をやろうと思えば数千万円の初期投資が必要ですから、やっぱりハードルはすごく高いとも感じます。

それもあってか、この辺だと新規参入者は畑の方が多い気がします。行方市はさつまいもをブランド化しているので、脱サラしてさつまいもを始める人が多いですね。コメに比べれば設備投資は少ないでしょうし、ブランド力が強ければ頑張った分売れるんだと思います。

コメの場合はやっぱり新潟県魚沼産のようにブランドイメージが固まっているので、この辺の地域をあげてブランド化するというのも難しいんですよね。もちろんこの辺で作っているおコメが他と比べて劣るなんてことはないんですけどね」

写真/Shutterstock
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諸条件に恵まれた田宮さんをして、ようやく「今後も農業を続けられる」という感触しか得られない米作を「絶望産業」にしたのは誰のせいなのかは、もはや衆目の一致するところだろう。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班