ストレッチなど軽いエクササイズより
有酸素運動が脳の老化におすすめの理由
「さあ、運動をしよう」と、闇雲に重いダンベルを持ち上げたり、坂道全力ダッシュをしたりしてはいけません。脳にとって一番よい運動を考えていきましょう。
脳のことを考えると、心拍数を、最大心拍数の70〜75%に保つことが一番よいといわれています。
どの程度の運動でその心拍数になるのかは人によりますし、いまはスマートウォッチで簡単に調べられます。あまり運動をしない人だと早歩き、運動をある程度する人だと軽いジョギングくらいでしょう。
先ほど述べた脳由来神経栄養因子(BDNF)を増やし、海馬を大きくするのに一番適しているのは有酸素運動です。
筋力トレーニングやストレッチでは同じ効果を得られません。
2011年、アメリカ・ピッツバーグ大学のカーク・エリクソン率いる研究チームが、120人の被験者を対象に1年間の間隔を空けて、脳を二度スキャンして海馬の大きさを測った実験があります。
実験に先立ち、被験者たちは無作為に2つのグループに分けられ、異なるタイプの運動を行うように指示されました。
一方は、有酸素運動(週に3回、40分の早歩き)。もう一方は、心拍数が増えないストレッチなどの軽いエクササイズでした。
1年が経過すると、ストレッチを行っていたグループの海馬は平均1.4%縮小していました。平均で年間1、2%縮小することを考えると理にかなった数字です。
これと比較して、有酸素運動を行ったグループの海馬は成長しており、2%ほど大きくなっていました。1年間老化がまったく進んでいなかったどころか、2歳も若返っていたのです。
私も、週3回を目安に、軽いジョギングをしています。
スイスの山の中に住んでいるので、家の周りは自然にあふれており、大自然の中を走ることができます。このときの心拍数は、最大心拍数の70~75%に抑えるようにしています。