「孤独」は大量のタバコや飲酒と同レベル
「一日15本のタバコ」
「依存症レベルの飲酒」
こう聞くと、「健康に悪そう」とほとんどの人が思うのではないでしょうか。
しかし、それと同等、もしくはそれ以上に健康に害がある「孤独・孤立」に関しては、健康に悪いものと認識している人は少ないのではないでしょうか。
社会的孤立は一日に15本のタバコを吸うことやアルコール依存症と同じくらい、健康に害があるといわれています。
アメリカ公衆衛生局長官のヴィヴェック・マーシーも、「孤独は21世紀のタバコ」ととらえ、タバコと同等の健康被害としてその影響を危惧しています。
イギリスで世界初となる「孤独担当大臣」も誕生…
世界保健機関(WHO)は2023年に、社会的孤立を「差し迫った健康上の脅威」と位置づけました。
社会的つながりを優先事項として促進し、あらゆる国々における解決策の規模拡大を加速させるために、「社会的つながりに関する委員会」を発足させました。
この委員会は、孤独の蔓延を世界的な公衆衛生の優先的課題として認識し、社会的つながりに関する取り組みの支援体制を整えることを目的としています。
2018年に、イギリスにおいて世界で初めて「孤独担当大臣」が置かれました。
それに先立ち、イギリス政府は孤独問題に対し、30億円近い予算を計上しました。ここまで本腰を入れたのは、孤独が医療費や経済を圧迫しかねないからです。
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスが2017年に発表した研究によれば、孤独がもたらす医療コストは、10年間で国民ひとりあたり約85万円です。
公的医療が無料のイギリスでは、地域の初期診療を担う総合医療医のもとにさまざまな患者が訪れます。
孤独に悩んで医師に話を聞いてほしいと受診するケースも多く、「診察の2割は医療が必要なのではなく、孤独に悩む人」という報告もあります。
核家族化、高齢化、都市の人口集中などを抱える日本においては、孤独・孤立が今後も進んでいくと考えられます。