ショッピングモールへの大量出店が「ヴィレヴァンらしさ」を失わせた
こうした「サブカルチャー」を求める声が多かったのか、ヴィレヴァンは急速にその出店数を伸ばしていく。特に、2000年代を中心として、全国各地にあるイオンモールの定番のテナントとしてヴィレッジヴァンガードは成長していく。
ちなみに、2024年1月の段階で私が数えたところによると、全国にあるヴィレヴァンのうち、その約半数がイオンモールに入る店舗となっていた。ショッピングモールは、その多くが郊外立地であり、家族連れが来る場合が多い。
となると、なかなかその店舗に「子どもだけ」で行けることは少ない。必然的に少し「尖り」を減らしたヴィレヴァンがそこに誕生することになる。
そうした意味でヴィレヴァンが初期、強烈に持っていた「毒」(それは「選択」を必然的にしていた)を薄めることになったのではないか。
ショッピングモールへの出店は、店舗を拡大していくときに必要なことではあったものの、ヴィレヴァンが行っていた「選択と集中」の効果を弱める役割を果たしてしまったのではないかとも思えてくる。
「毒」がなくなっていった商品ラインナップ
こうしたヴィレヴァンによる「選択と集中」のミスは、出店戦略以外にも多く見られる。例えば、商品選定。先ほども紹介したように、初期のヴィレヴァンには、決して普通の店では手に入らないような「尖った」商品が数多くあった。
これも、私がヴィレヴァンについての記事を書いたときの反響として多く聞かれた声で、特に2011年あたりから、本社が主導してヴィレヴァンの店内に置かれているアダルト関連の商品が順次、撤去されはじめた。
現在でも、多くの店ではアダルトグッズの取り扱いがなく、ヴィレヴァンのオンラインサイトでの取り扱いがあるのみだ(ちなみに、商品カテゴリは「秘宝館」)。
また、SNSではいわゆる「エロ」だけではなく、「グロ」や「ナンセンス」的な商品についても、その取り扱いがほとんど無くなってしまったことを憂う声が多かった。
例えばカルト宗教の本や、90年代、若者に絶大な人気を集めた『完全自殺マニュアル』など、いわゆる「90年代サブカル」と呼ばれるカルチャーでよく読まれていた書籍の取り扱いもあったらしい。初期のヴィレヴァンに迫った『菊地君の本屋』の定番商品リストには、90年代鬼畜系カルチャーを先導した青山正明が書いた『危ない薬』も書かれている。
こうした商品の代わりに現在、多くのヴィレヴァンで置かれているのは、VTuberやYouTuberとコラボした商品、あるいは他の店でも手に入る漫画などで、かつてに比べれば確かに「毒」が無くなってしまったといえるだろう。
もちろん、時代の流れで、こうした過激なものが置けなくなってしまっている現状はあるものの、冷静に分析すれば、そうした商品ラインナップの変化が、ヴィレヴァンの「選択と集中」を弱めたのは、確かに指摘できるはずだ。