ヴィレヴァンは徹底的に〝サブカル〞な顧客を「選択」していた
まずは①から見ていこう。
そもそも、ヴィレヴァンという店舗を支えていたのは、その店舗空間のこだわり、世界観だった。ヴィレヴァンに入ったことがある人であればわかるだろう。その中は、通路が入り組んで迷宮のようになっていて、一見すると何に使うのだかわからない商品であふれている。
ヴィレヴァンを表す言葉といえば「サブカルチャー」という語に尽きる。決して、すべての大衆に受けるわけではない、ちょっと横道に外れた「サブカルチャー」、これこそヴィレヴァンがその店舗づくりで意識していたことだ。
その創業者である菊地敬一は、従業員に対して次のような言葉を述べたという。
「本というのは特別な消費財なんだ。まず、本を売ることに矜持を持とう。コンビニで本を買うようなセンスの悪い奴は相手にするな」(『ヴィレッジ・ヴァンガードで休日を』、p.50)
ここからは、ヴィレヴァンがそこにやって来る客層を徹底的に「選択」していたことがわかる。実際、初期のヴィレヴァンで売られていたもののリストを見ると、きわめてアンダーグラウンドな漫画や小説、その他、決して「万人ウケ」するタイプではない商品がずらりと並べられていたようである。
その結果として、その店内は、どこか猥雑で薄暗いイメージを持つ、まさに現実世界からは遊離した「テーマパーク的」な空間となっていった。この意味でいえば、まさに現在の「ニセコ化」というトレンドをしっかりと押さえていた。「選択と集中」はとても上手くいっていた。だからこそ、初期のヴィレヴァンはその勢力を拡大することができたのだろう。しかし、その拡大方法に問題があった。