「被害者の尊厳を否定する極めて残酷で悪質な犯行」

この裁判では、被害者参加制度でAさんの遺族が傍聴していた。遺族の代表として、2名の代理人弁護士が直接、被告人質問をした。

代理人弁護士「Aさんが暴力をふるわれたとき、どういう気持ちか考えたことはありますか」

小西被告「すごく怖くて、痛くて、つらくて、苦しかったと思います。すごくつらかったと思います…」

代理人弁護士「自分が同じ目に遭っていたと思うと、どうですか」

小西被告「…つらい。…つらいと思います」

さらに、被告の母親が拘置所に面会にきてくれた話になると、言葉を詰まらせ、さらに代理人弁護士から「大切なものはなにか」と聞かれると、「すみません。家族です」と話した。

Aさんの命を奪ったにもかかわらず、大切なものは「家族」と答えることに抵抗があったのか、か細い声であった。

一方で、代理人弁護士は被告が遺族に宛てた謝罪文を、Aさんの両親は受け取っていないことを明かした。

それに対し小西被告は「当然のことです。自分の大切な子を殺した犯人からの手紙は読みたくないと思います」と語った。

ここで代理人弁護士は、謝罪文に被告の具体的な償いの方法が書かれていないと指摘。

被告は、まっすぐ裁判官、裁判員の方を見つめて「償いが終わるということはないので、今後も考えていきたいと思います」とハッキリとした口調で述べ、この日の裁判は閉廷した。

翌5日の第五回公判で検察側は、これまでの被告の供述は「自分自身の責任を過少に見せたいというもので信用できない」と説明したうえで、被告は「主体的に犯行に関わっており、内田被告と同程度の責任がある」と指摘。「被害者の尊厳を否定する極めて残酷で悪質な犯行」だとして、懲役25年を求刑。

これに対して、弁護側は「内田被告の指示のもとで従属的な犯行」であることを強調し、被告には更生の可能性があるなどとして、懲役15年が相当だと主張した。

最終陳述で被告は、まっすぐ裁判員、裁判官の方を見ながら「自分の責任であり、誰のせいでもありません。本当にすみませんでした」と述べ、結審した。

判決を待つだけになった小西被告。証言台で涙ながらに語ったその後ろ姿には、覚悟が決まっているような雰囲気を醸し出ていた。

判決は、3月7日午後3時から言い渡される予定だ。

神居古潭の東屋には手向けられた花が雪に埋もれていた(筆者撮影)
神居古潭の東屋には手向けられた花が雪に埋もれていた(筆者撮影)
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取材・文/学生傍聴人