ビタミンCの「適量」は自分で見つける
ポーリング博士の発見のポイントは、ビタミンCは、その何倍にも摂取量を増やしても安全だし、増やすことによって、壊血病だけではなく、もっとさまざまな病気を未然に防ぎ、また治療することができる力を持っているということだった。
18グラムというのは正直ちょっとびっくりしたが、適量の数字は人によってまるで違うし、また同じ人でも年齢や体調によって全然違ってくるので、ちょうどの頃合いを自分で探し出すのが賢い使い方だと言う。
当時85歳のポーリング博士も、60代の頃は、一日2、3グラムから始めたらしい*6。
水溶性のビタミンは、摂りすぎても余分は尿に出てしまうから副作用の心配はいらないし、やや軟便になることが十分足りているという目安になるので、適量の判断を自分でするのも簡単だと言う。
なるほど、いずれにしても、理論がシャープなだけではなく、研究を我が身で実践している先生の話は、聞いていて安心感があり、やってみようという気になりやすいのである。
何より「自分のからだで確かめながらポイントを探す」というのは、普段の私の遊びのつぼ、ど真ん中だ。
そこで我が身をじっくり観察しつつ、500ミリグラムのビタミンCと、それと組み合わせるといいとおすすめのマルチビタミン・ミネラルの錠剤とともに、春夏秋冬をひとまわり過ごしてみることにした。
その結果、毎日の量とタイミングをある程度うまく調整できるようになるまで1、2ヵ月。
1年が経過する頃には、風邪を素早く治すのにも、ストレスがたまりがちなときも、タイミングよく量を増やすことでうまくしのいでいくコツと、絶対風邪をひきたくない! というときの予防の術を、まがりなりにも身につけた。
個人的には、我が家では家族も含めて、ビタミンCの効果をからだでめでたく納得し、うん、なるほど役に立つんだねえ、という実感を得たのは確かなことだ。
元気なときとひどい風邪をひいて体調が悪いときの適量の差は、当時の私の場合、1日2グラムから10グラムぐらいの間だということもわかった。
ああ懐かしい。あれは、やってみて、ほんとうに面白かった。風邪やストレスとの新しい闘い方を習得し、とってもためになったことも事実だ。
写真/shutterstock
脚注
*1 原題『VitaminC and the Common Cold』(邦題『さらば風邪薬!ビタミンCで風邪を追放』)。
*2 主要参考文献 Vitamin C, the Common Cold and the Flu, L. Pauling, 1976. W.H. Freeman & Company.(『ライナス・ポーリングのビタミンCとかぜ、インフルエンザ』L.ポーリング著 村田晃訳 1977 共立出版)
*3 主要参考文献 Cancer and Vitamin C: A Discussion of the Nature, Causes, Prevention, and Treatment of Cancer with Special Reference to the Value of Vitamin C, E. Cameron and L. Pauling,1979. W.W. Norton & Company.( 『がんとビタミンC』 L.ポーリング、E.キャメロン共著 村田晃、木本英治、森重福美共訳 2015 〔初版は1977〕 共立出版)
*4 主要参考文献『おいしく治そう・栄養療法の権威が答える健康ハンドブック』丸元淑生著 1986 文藝春秋
*5 現在の推奨量は、アメリカ90ミリグラム、日本は100ミリグラムになっている。
*6 主要参考文献『新・ビタミンCと健康・21世紀のヘルスケア』村田晃著 1999 共立出版
これまでに専門的な研究によって一般的な安全性や効用が発表され、広く確認されてきた素材やその活用法について、著者の経験を合わせながら紹介しています。しかし、どんなに安全性が高いとされる素材も、全ての人に相性がよいということはありません。「自分との相性」を注意深く確かめながら、自己判断の上で、活用するようにしてください。
また、はちみつは、幼児の発達と健康に大変よいとされているものの、過去にはちみつの中にボツリヌス菌が見つかったことがあることから、腸内細菌叢が未発達な1歳未満の乳児には与えるべきではないとされています。