“続けること”はとても大事なこと
よくよく考えると、ある意味、今の私はよりピュアな気持ちで仕事と向き合えているのかもしれない。
なんせ、若手の頃は「あの人に負けたくない」「もっと自分は面白いのに」「もっとテレビに出たい」なんて、欲まみれだったから(笑)。
振り返ると、若手の頃の私はいつもビクビクしていました。
もともと人見知りで、人に嫌われたくない性格だからこそ、誰も知らない現場では周りの顔色ばかり窺って、何も喋れないまま収録が終わってしまうこともあったりして。
でも、この業界に長くいるおかげで、共演者や同業者に知り合いが増え、皆が私の扱い方もわかってくれているからこそ、仕事現場でメンタルがビクビクすることがなくなった。
信頼できるスタッフさんにも恵まれて、コミュニケーションをとりながら、より自分らしく仕事ができるようになった気がします。
良いことも悪いことも含め、今目の前にあるのは仕事を続けてきたからこそ見える景色で。
やっぱり“続けること”はとても大事なことなんだと思う。
以前は「続けるために大事なのは、毎日100点ではなく75点を目指すこと」なんて公言していた時期もあったけど。
最終的に大事なのはやっぱり「楽しむこと」なんだと思います。
現場には信頼できる人たちがいて、その空間で自分は楽しくやっていただけなのに、気づいたらフロアにいるスタッフも笑っていて、「ああ、今日は自分も周りも皆で笑えた良い一日だったな」と帰路につく……。
そんな仕事を積み重ねていくことが“続けること”につながるのだろうなって。
ただ、ここで大事なのが「果たしてこれが正解なのかどうか」、俯瞰で自分を見る視点を持つことですよね。
もしかしたら、「私が楽しんでいたら、結果的に周りもOKなんじゃないか」というその感覚は加齢による図々しさからきているのかもしれない。
考えるのが面倒でラクなほうに思考をスライドさせているだけかもしれない。
でも、何より一番怖いのが「実は楽しんでいるのは自分だけ」というパターンですよ。
ほら、無駄に芸歴が長いと、周りの人に気を遣われちゃうから。
「先輩を滑らせちゃいけない」って、周りが無理に笑ってくれるから。
そうなっているのを感じたら、こっそり教えてくださいね。
なんなら、ファンレターに書いてくださいね。「大久保さん、ヤバイですよ」って。
聞き手・構成/石井美輪 題字・イラスト/中村桃子 撮影/露木聡子