「キーマンが亡くなったり引退して後継者不足に…」

ほかにも乾燥機やもみすり機、計量選別機、もみ運搬機、軽トラック、農業用機械倉庫が最低限必要で、どれも数十万円から百万円単位という高額だ。そして、肥料や農業資材は別途必要になる。

「こうして手持ちの現金はなくなり、農業機械のローンだけが増えていった。農業経営は収穫して入金されたらほとんどが支払いで消える『自転車操業』でみな、苦しんでいるのです。

しかも農機は壊れやすく、修理費用が50万円になることも珍しくない。農機メーカーが上場企業となり一流企業の仲間入りをしているのも、『我々を食い物にしているからだろう』と多くの農家は考えていますよ。

今期末の純損益見込みを1兆9000億円の赤字と発表した農林中央金庫も然りです。苦しむ農家から得た金で、農業関連企業や団体が莫大な金を動かして失敗している現実は、日本の農業が腐敗している証拠ですよ。そもそも2兆円近い赤字って、どうやったらそんな金額になるんですか」

西岡さんの畑と農機(本人提供)
西岡さんの畑と農機(本人提供)

こう訴える西岡さんの周囲でも、団塊の世代が引退して一枚、また一枚と田んぼが消えているという。

「コメの値上がりは肥料など農業資材が2倍以上に値上がりしたからだと農業者は思っていたが、それだけではないことがわかってきた。これまでは、高齢の農業者があれこれと配慮して、水利問題やらなんやら農業に関わる面倒な人間関係や利権が収まっていた。

しかし、そういうキーマンが亡くなったり引退して後継人材が不足し、里山と農業に変化が起きているんですよ」