元記者が中古の農機具を購入して… 

西岡さんは原発技術者として働いた経験をまとめた『ぼくが、原発に反対する理由: 海を見た原発技師』(1989年、徳間書店)などの著書があり、雑誌記者や編集業務に長年携わってきた。

しかし過労が原因で体調不良に陥り、約20年前に実家の松山市に帰郷、ほどなく小規模農家と農事組合法人の理事長を兼任していた父親が病死したことをきっかけに、未経験の農業を継ぐことになった。

いきなり「専業農家」デビューした西岡さんを悩ませたのは、小規模農家でも設備投資には大金がかかることと、農業機械がちっとも言うことを聞かないことだった。

「一番困ったのは農業機械が動かないし、よく壊れることだった。受け継いだ農機はどれも旧式。まともに動くのはトラクターだけで、これとて別の問題を抱えていた。ちなみに父から受け継いだ田んぼは1町1反(1.1ヘクタール)で、2025年3月現在、私の耕作面積は1町8反(1.8ヘクタール)。

農機としては入門機ではなく、小規模農家クラスの機械を必要とします。この規模に応じて購入する農機の支払いローンと修理費用が収入に見合わず、私を苦しめるのです」

元記者・編集者の西岡孝彦さん(本人提供)
元記者・編集者の西岡孝彦さん(本人提供)
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米作だけでは経営が成り立たないと考えた西岡さんは、裏作で麦の栽培をすることにした。しかし、父から受け継いだトラクターは小型で安定感に欠けるため、汎用型の29馬力のトラクターに買い替えた。

コンバイン(刈り取り、脱穀、選別の機能を兼ね備えた複式収穫機)や田植え機も修理や更新が必要だった。

「古い小型のトラクターを下取りしてもらい、旧型で売れ残りの汎用型トラクターを400万円(7年ローン)で買った。コンバインは刈り取った稲がそのまま地面に落ちてしまうなどまともに動かず、多額の修理を繰り返した末、3年後に中古のコンバインに買い替えた。

それが約150万円(5年ローン)だったがこれも壊れて、いまは130万円で買った中古のコンバインを使っています。田植え機も動かなかったので、40万円で中古機を購入し、これも5年ほど前に車体が壊れて中古に買い替えました。

この田植え機は同時に肥料も散布するタイプで、肥料散布の機構が壊れては直しを繰り返して、そのたびに数万円から15万円以上の修理費用がかかります。あまり金もかけられないので、最近は施肥機能は壊れたままで使っている状態です」