JAの職員が「コメが例年の6割も集まってなくて困ってます」
栃木県さくら市小入で「コシヒカリ」や「にじのきらめき」などを作るコメ農家・岡田伸幸さん(40)は25歳で脱サラし、いきなり「専業」でこの世界に飛び込んだ。先祖代々が300年近く続けてきた米作だったが、年老いた祖父母の後継者が見つからず廃業すると聞き、名乗り出たという。
以来、苦労の連続だった15年で膨らんだ借金は1億円にものぼるという。そんな岡田さんが「米騒動」を予感したのは昨年春のことだった。
「お米がないんじゃないかって感じ始めたのは去年の3月とか4月頃のことでした。卸売業者が『全然コメがない。あるだけのコメを売ってほしい』とやってきたんです。僕は完全予約制で在庫を持たないので、そう言われても出すコメはありませんでした。
6月末になるとコメ不足が騒がれ始めて、今まで来たことのないお客さんがここに直接訪れるようになりました。全国的な牛丼チェーンの担当者が直接『おコメをあるだけ売っていただきたい』と訪ねてきて驚かされたほか、中国やベトナムの方もきました。しかし、先ほど申し上げたたように売るコメもないので、その事情を伝えて帰ってもらいました。
それにこれまで15年間、米農家をやってきましたが去年初めてJAの職員が『コメが例年の6割も集まってなくて困ってます。少しだけでも都合がつきませんか?』と訪ねてきました。普段僕はJAには出していませんし、数年前は周囲のコメ農家の間でも『コメは余っている』という話でしたからね」