無印良品・バターチキンカレーはなぜ爆売れしたのか?「おいしいものは脂肪と塩でできている」仕掛け人が明かすインドの大衆カレー料理店での秘話
レトルトカレーの新境地を切り拓き、無印良品の「食」の象徴的存在となった「バターチキン」。その味づくりに長く携わったのが産業フードプロデューサーの中村新氏だ。「バターチキン」のおいしさの極意の発見につながったインド・オールドデリーのカレー屋と中村氏の出会いを紹介する。
著書『「無印のカレー」はなぜ売れたのか?』より一部抜粋・再構成し、紹介する。
「無印のカレー」はなぜ売れたのか? 食品ビジネスで成功する思考(フィロソフィー)と仕組み
味を引き締めているのは塩
次の店はオールドデリーの(支店がバンガロールにもある)、歴史があり、かつ人気の高いイスラム系レストランだった。ここの名物は、絶妙に旨い羊の脳ミソのカレー。トロリとした脳ミソとパンチのあるカレーソースが最高の相性。
もちろんオーダーしたが、これに魂を持っていかれそうになる自分を制し、バターチキンカレーに集中だ。
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ほろりとした鶏のもも肉は、ほんのりと炙った炭の香りがし、厚みのある甘みとクセのない後味が良い。先ほどの店の味とは異なり、凝縮した旨みがソースに集約されている。そして何より、独特の甘みと酸味がたまらない。
インド料理は野菜らしい甘みが特徴であるが、それを引き締めているのは塩である。どの料理を食べても、味の輪郭がしっかりとした塩味で引き締められている。しかもそれは、野菜などの素材と複合した、複雑な甘みと折り重なるような風味を引き出す油脂とともに、おいしさを際立たせていたのだ。
インドでは日本と違って、「おいしいものは脂肪と塩でできている」。これは極意である。
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「無印のカレー」はなぜ売れたのか? 食品ビジネスで成功する思考(フィロソフィー)と仕組み
中村新
2025/1/27
1,650円(税込)
226ページ
ISBN: 978-4865936940
陰の立役者が豊富なエピソードとともに解説
レトルトカレーの新境地を切り拓き、 無印良品の「食」の象徴的存在となった「バターチキン」。その味づくりに長く携わった産業フードプロデューサーが、ヒットへの道程や極意を解説。思考から値づけまで食ビジネス成功のポイントを明かします。付録「中村新オリジナル 簡単ごちそうレシピ」を収録。
《コンテンツの紹介》
【はじめに】成功の土台にはフィロソフィーがある
【1章】噺家志望だった少年が、食の世界にとりつかれた
・客商売でいちばん大切なこと
・はからずも〝料理界の東大〟へ
・携帯のない時代、電車で何をしていたのか
・人生を変える出会いと大失敗
・ゴミは宝物――捨てる神あれば、拾う神あり
・夢の番組担当が始まった
・ヨーロッパ修行で受けた洗礼
・発想・技術・道具で得た小さな栄光
・ウェインストック卿の週末料理人
・プロデュース業の重要性とおもしろさに目覚める
【2章】無印のカレー開発秘話―おいしいだけでは売れない
・おいしいだけでは売れない
・小さな転機
・素の食は民藝に置き換えられる
・たかが下味、されど下味
・「レトルト食品」が売れていた理由
・無印良品の要は品質管理
・本場に出かけたからこそわかったこと
・課題を抱えるエースの改良依頼がきた
・海外食リサーチの心得
・バターチキンの〝無印良品的本質〟を見つける
・おいしいものは油脂(アブラ)と塩でできている
・購買ターゲットは誰か
・最初の試作品ができあがる
・バターチキンカレーを変えたもの etc.