「謎の男」の仲介でトランプとロシアが接近
そんな窮状を救った謎のユダヤ系ロシア人ビジネスマンがいる。米露の情報機関とも関係を維持するこの男がニューヨークのトランプタワー24階に事務所を置いたのをきっかけに、トランプのビジネスは上向き、モスクワにトランプタワーを建設するプランが浮上するなど、トランプとロシアの関係がぐっと近くなるのだ。
この男フェリクス・セイターは8歳の時に、一家でイスラエル経由で米国に移住。ニューヨーク・ブルックリンで育ち、米国籍を得た。父は米国でマフィアの一員になったと言われる。本人は大学を中退し、ウォール街で証券会社の電話セールスの仕事に就いたが、若いころはならず者で、1991年に酔っ払って喧嘩し、マルガリータが入ったグラスで相手を殴り、禁錮1年の刑に服したことがあった。
その後証券会社を設立、いかがわしい株取引やマフィアとの関係が連邦捜査局(FBI)に探知され、取り調べを受けた。有罪を認め、ウォール街で暗躍する組織犯罪グループに関する情報をFBIに提供するのと引き換えに、禁錮刑を逃れ、2万5000ドルの罰金刑を受けただけで済んだ。
この間、セイターはFBI、さらにCIAのエージェントとして、アフガニスタンに残留していた米国製の肩掛け式スティンガー・ミサイルの回収作業に協力。9・11米中枢同時多発テロの首謀者、ウサマ・ビンラディンの衛星電話の番号も入手したといわれる。後の米司法長官ロレッタ・リンチは議会証言で「セイターの情報は国家安全保障にとって重要で、非常に役に立った」と証言している。
また一時、「ニューヨークの銀行家」と称してロシアに戻り、旧ソ連の国家保安委員会(KGB)の高官やGRUの関係者と知り合ったという。恐らく米露情報機関を二股にかけた二重スパイと言えるだろう。