オスプレイの修理費はなんと5.6億円と判明

沖縄県の与那国島で昨年10月、離陸時に事故を起こした陸上自衛隊のオスプレイの修理費は、初期見積もりで5億6000万円にのぼることがわかった。この金額は米軍の基準で被害総額が250万ドル(約3億7750万円)以上の重大事故を示す「クラスA」にあたる。「クラスA」の事故が起きたのは、自衛隊にオスプレイが配備された2020年7月以降、初めてとなる。

民間業者に依託した機体の海上輸送には2億2000万円かかっており、これを被害総額に含めれば事故総額は7億8000万円にもなる。相次ぐ墜落事故で欠陥機との評価がすっかり定着した米軍のオスプレイは、自衛隊でもとんだやっかい者だった。

防衛省が修理費を明らかにしたのは2月12日、衆院第二議員会館で開かれた市民団体『オスプレイと飛行訓練に反対する東日本連絡会 』と防衛省・外務省との交渉の席だった。連絡会からの質問状に回答する形で会合が進み、最後に与那国からの輸送費について金額の確認を求めた際、防衛省の担当者から修理費について説明があった。

初めて飛び出した5億6000万円という巨額の修理費について、出席した金子豊貴男元相模原市議は「びっくりした。それまで何を聞いても『運用上の都合』といってゼロ回答が続く中で具体的な数字が出てきた。あまりの金額に与那国で機体を解体して、廃棄すればよいのにと思った」と話す。

陸上幕僚監部広報室は「千葉県の木更津駐屯地で機体を点検しているところ。正確な修理費はまだ出ていない」とし、「クラスA」の重大事故に該当するかどうか、「現段階ではわからない」としている。

事故は昨年10月27日、日米共同統合演習「キーン・ソード25」の中で起きた。木更津駐屯地から与那国駐屯地に飛来していたオスプレイが離陸直後にバランスを崩し、左翼先端にあるナセル(エンジンを収容する円筒部分)が地面と接触して損傷したのだ。

機体はそのまま駐屯地グランウンドに留め置かれ、3週間後の11月14日になってようやく、陸上幕僚監部がエンジンの出力を上げるスイッチを入れ忘れた操縦士の人為的ミスが原因と発表した。

オスプレイは機体重量に対してローター(プロペラ)が短いことから、一時的にエンジン出力を100%以上にする必要があるという。他の航空機やヘリコプターと比べ、100%以上の出力が欠かせないこと自体が異常だ。

機体が左右に揺れた結果、左翼のナセル下部を損傷したが、そもそもナセルが地面に近いという構造自体に難がある。スイッチひとつの入れ忘れが、5億6000万円の修理費を負担するほどの事故になったのは、構造的な問題と言うほかない。

与那国に留め置かれた事故機は昨年12月19日、主翼を畳んだ状態で塩害を避けるためのシートにくるまれ、時速2キロで久部良漁港まで運ばれた。その後、台船に載せられた機体は同29日木更津駐屯地に到着、岸壁からクレーンで陸揚げされた。

シートにくるまれた輸送中の事故機(写真/共同通信)
シートにくるまれた輸送中の事故機(写真/共同通信)
すべての画像を見る

海上輸送を請け負ったのは沖縄の海運会社「OTK」で受注額は前述したように2億2000万円だった。陸幕広報室によると、現在も機体の調査と点検が続いており、修理にいつまでかかるか答えられないという。