「性被害者が声を上げられないのと構造は全く同じ」

民事裁判で伊藤氏の代理人だった西廣弁護士らが「伊藤氏の映画について修正を求める」会見を行うことで、性暴力被害者であった伊藤氏を貶めているのではという声もあるが、西廣弁護士は会見で「伊藤氏が被害に遭ったことは真実であり、そのことは紛れもなく変わらない事実。今回の話と彼女の裁判は別問題。伊藤さんへの誹謗中傷はやめてください」と訴えている。

ブリュッセルの欧州議会に登壇した伊藤氏 写真/共同通信
ブリュッセルの欧州議会に登壇した伊藤氏 写真/共同通信
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今回の会見で気になったのは、西廣弁護士らがなぜ、「自分が直接関係しているホテルの防犯カメラの映像」の削除だけでなく、「タクシー運転手や捜査員Aの映像や音声」についても修正を求めているのか、という点だった。

「目の前で殴られている人を見たときに、そのまま通りすぎていくことができるのか。人権を擁護することが使命とされている弁護士としては、まさにそういう場面なんです。

すでに映画が世界各国で上映されていますが、当人自身は自分の顔や声などを流してほしくないと思っているであろうということを訴訟中に感じて分かっている。そんな人権上の問題を見逃していいのかという気持ちです。

私たちの会見を批判する人たちからは二言目には『本人たちはなにか言ってきたんですか』と聞かれますが、本人たちが言えるわけがありません。そんなことを言えばもっと大ごとになりますから。本人が声を上げなければそれで問題ないのかとも思いますし、それは性被害者が声を上げられないのと構造は全く同じです」(西廣弁護士)

作品は現在、「50以上の映画祭で上映され、18の賞を受賞。さらに、世界30以上の国と地域での配給が決定」(スターサンズHP内、1月23日付「NEWS」より)しているという。

後編では、作中で防犯カメラ映像を無断使用し、これまで協力してくれた人々のプライバシーが懸念される状態での映像使用に「公益性」があるのかを佃弁護士に聞く。

#2 に続く

取材・文/高橋ユキ