夏休み明け、突然の登校拒否

文部科学省のデータによると、2022年度の小中学生の不登校児童・生徒は約30万人にのぼり、過去最多を記録している。

とりわけ夏休みなどの長期休暇明けは、これまで学校でしんどい思いをしてきた児童・生徒が、登校するプレッシャーを強く感じるタイミングで、自殺や不登校の割合が多くなることも周知の事実だ。

2022年の夏休み明け、当時小学2年生の息子が、ランドセルを背負いながらも「学校に行きたくない」と泣きじゃくり、間中さんは玄関前に突っ伏すしかなかった。

「息子からのSOSは突然だったので、頭が真っ白になったのを覚えています。もともと息子は繊細で感受性が強く、教室で誰かが怒られていると自分のことのように錯覚したり、体育の時間になると緊張して体が強張ってしまうと明かしていました。

いま思えば、息子は学校生活を窮屈に感じて、ストレスが蓄積していたのだと思います」(間中さん、以下同)

少し休んだらまた学校に戻ってくれるはず……。当初はそう考えていた間中さんだが、1ヶ月が経過しても息子は登校するそぶりを見せなかった。

むしろ学校に行けないことを負い目に感じたからか、自分の髪の毛をむしったり、自分の指を強く噛んだりと、自傷行為めいた行動を取るようになった。

「息子は『なんで自分は学校に行けないんだ』と悩んでいました。本人も学校に行きたい気持ちはあるのに、いざ通おうとすると足が動かない。そのジレンマに苦しんでいたのだと思います」

間中あゆみさん(仮名・40代) 写真/本人提供
間中あゆみさん(仮名・40代) 写真/本人提供
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夫の反対を押し切り、45万円を支払い

もがき苦しむ息子をそばで見ていた間中さんは、藁にもすがる思いで、ネットやSNSで不登校について調べるようになる。

その一環で辿り着いたのが、インスタグラムで見つけた「スダチ」という不登校支援業者だった。

「スダチのホームページには、『平均3週間で不登校を解決』『再登校率は90%以上』といった実績とともに、肯定的な口コミが多数書かれていました。

実際に、無料面談を受けてみると、熱血そうなスタッフが対応してくれました。当時、周りに同じような境遇のママ友もおらず、誰にも悩みを打ち明けられないでいた私は、精神的にも不安定で揺らいでしまったんです。

夫は『そんなの効果あるのか? 騙されてるぞ』と強く反対していたのですが、子どものためなら端金だと、夫の言い分を押し切って入会しました」

スダチのホームページより
スダチのホームページより

こうして2022年秋に、およそ45万円を払い、サポートを受けることを決めた間中さん。

スタッフと間中さんがオンラインで、そのつど家庭の状況を報告しつつ、スタッフが改善策を提示するスタイルで、再登校のアプローチを進めていった。

「スダチからは、『起床から就寝まで時間を決めて家族全員で同じ生活リズムを送る』『スマホやパソコンなどのデジタル機器を取り上げる』『子どもを1日10回以上褒める』といった具体的な指示がありました。

スタッフからは、『デジタル依存によって生活習慣が乱れ、睡眠障害やうつ病などの精神疾患、注意や遂行能力の低下を引き起こす』と指摘されました。

また、『デジタル機器を取り上げることで生活リズムを立て直し、社会に出るための準備をしましょう』と提言されました」